メトホルミンは浸潤性乳がん患者の生存率を改善しない

メトホルミンは、古くから使われている低コストの2型糖尿病治療薬であり、現在でも多くの患者に対する第一選択薬として処方されている。主としてインスリン抵抗性を改善することで血糖降下作用を示す。近年、メトホルミンがいくつかの種類のがんを抑制するように働く可能性が、観察研究や前臨床研究から示されている。現時点では、同薬が高インスリン血症を改善することによって、がん細胞の増殖を抑制するのではないかと考えられている。これを背景にGoodwin氏らは、浸潤性乳がんに対するメトホルミンの有用性を検証した。
この研究は、カナダ、スイス、米国、および英国において、第3相無作為化プラセボ対照二重盲検試験として実施された。対象は、糖尿病のない手術可能なハイリスクの非転移性乳がん患者3,649人(平均年齢52.4歳、女性99.8%)。2010年8月~2013年3月に研究参加登録を行い、2020年10月まで追跡した。全例に標準的な乳がん治療を行った上で、1群にはメトホルミン850mgを1日2回、他の1群にはプラセボを5年間投与した。
中間解析の結果、エストロゲン受容体(ER)とプロゲステロン受容体(PgR)が陰性の場合は無効であることが報告されたため、ER/PgR陽性の2,533人に絞り込んで追跡。中央値96.2カ月(範囲0.2~121カ月)の追跡で、465人が無浸潤疾患生存(iDFS)を達成した。
iDFS率は、メトホルミン群が100人年当たり2.78、プラセボ群では同2.74であり、有意なリスク差は認められなかった〔ハザード比(HR)1.01(95%信頼区間0.84~1.21)、P=0.93〕。死亡リスクについても、メトホルミン群が100人年当たり1.46、プラセボ群は同1.32であり、有意差がなかった〔HR1.10(95%信頼区間0.86~1.41)、P=0.47)。
グレード3の非血液毒性の発現率は、プラセボ群よりメトホルミン群の方が有意に高かった。(17.5対21.5%、P=0.03)。グレード3以上の非血液毒性として、高血圧、月経不順、および下痢の頻度が高かった。
著者らは、「糖尿病を伴わない手術可能なハイリスクの非転移性乳がん患者に対して、標準的な乳がん治療にメトホルミンを追加しても、iDFS率は有意に改善されなかった」と結論付けている。なお、HER2陽性乳がん患者620人を対象とする探索的分析からは、メトホルミン群でiDFSと全生存期間の有意な改善が確認されている。
本研究において、カナダのアポテックス社がメトホルミンとそのプラセボを提供した。また、数名の著者が製薬企業との金銭的関係の存在を明らかにしている。
[HealthDay News 2021年6月6日]
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