吸入インスリン+持効型溶解インスリンは従来療法に非劣性
成人1型糖尿病患者に対する血糖管理において、吸入インスリンと持効型溶解インスリンの併用が、従来療法に劣るものではないとする研究結果が報告された。米ワシントン大学のIrl B. Hirsch氏らの研究によるもので、詳細は「Diabetes Care」に12月6日掲載された。
吸入インスリンは、速効型インスリンアナログ製剤よりも効果発現が速いため、食後血糖のより厳格な管理に適している可能性があるが、実臨床のデータはいまだ十分でない。
これを背景にHirsch氏らは、成人1型糖尿病患者が、現在行っている治療法を吸入インスリンと持効型溶解インスリンの併用に切り替えた場合の血糖管理状態への影響を、多施設共同ランダム化比較試験により検討した。
研究参加者は19施設の成人1型糖尿病患者で、18歳以上、罹病期間6ヵ月以上、HbA1c 11.0%未満、治療法を過去3ヵ月以上変更していないこと、連続血糖測定を使用していることなどを適格条件、喘息、肺がん、喫煙習慣などを除外条件として募集された123人。
平均年齢は45±15歳、女性54%、HbA1c7.6±0.9%であり、研究参加時点の治療法は、自動インスリン投与システム(AID)が48%、インスリン頻回注射(MDI)が44%、非自動のインスリンポンプが6%などだった。
ランダムに2群に分け、62人を吸入インスリン(Technosphere insulin)と持効型溶解インスリン(デグルデク)の併用に切り替える「TI群」、残りの61人はそれまでの治療法を継続する「対照群」として、17週間追跡しHbA1cの変化を比較した。
TI群のHbA1cはベースライン時点が7.57±0.97%であり、17週時点で7.62±1.06%だった。対照群は同順に7.59±0.80%、7.54±0.77%であり、調整後の差は0.11%(95%信頼区間-0.10~0.3)で、両群間に有意差は認められなかった(非劣性のP=0.01)。
ベースラインから17週目にかけて、TI群では12人(21%)、対照群では3人(5%)にHbA1c0.5%以上の改善が見られ、同順に15人(26%)、2人(3%)が0.5%以上悪化していた。
TI群においてもっとも一般的な副作用は軽い咳(brief cough)であり、8人が副作用のためにTI治療を中止した。
これらの結果に基づき著者らは、「主にAIDまたはMDIにより血糖管理を行っている成人1型糖尿病患者において、吸入インスリンと持効型溶解インスリンの併用療法のHbA1cに対する効果は非劣性だった。1型糖尿病患者が特に食後高血糖による影響を軽減しようとする際に、この併用療法は選択肢として検討されるべきと言える。ただし、吸入インスリンの処方に際しては、適切な患者選択が重要である」と述べている。
なお、複数の著者が本研究に資金を提供したMannKind社を含む製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を開示している。
[HealthDay News 2024年12月16日]
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