インスリンポンプ「ミニメド770Gシステム」発売 日本初のハイブリッドクローズドループを搭載 基礎インスリン注入量を自動調整 メドトロニック

2022.01.14
 日本メドトロニックは、基礎インスリン注入量を自動調整することで、インスリン治療を必要とする患者の生活の質(QOL)向上に寄与することが期待されるテクノロジー「ハイブリッドクローズドループ(HCL)」を搭載したインスリンポンプ「ミニメド770Gシステム」の承認を取得し、1月20日より販売を開始すると発表した。

 「ミニメド770Gシステム」は、日本初のハイブリッドクローズドループ(HCL)テクノロジーを搭載したインスリンポンプ。独自技術である「スマートガード オートモード」により、患者に合わせ、自動で高血糖と低血糖の両方を予防し、血糖値をコントロールし目標範囲に維持する手助けをするよう設計されている。

日本初のハイブリッドクローズドループ(HCL)テクノロジー搭載

ミニメド770Gシステム
販売名:メドトロニック ミニメド700シリーズ
承認番号:30300BZX00256000
リアルタイムCGMで得たグルコース値などにもとづき基礎インスリン量を自動調整

 「ミニメド770Gシステム」に搭載された「スマートガード オートモード」は、患者の過去のインスリン注入履歴と、リアルタイムCGMから5分ごとに得られるセンサグルコース値にもとづき、システムが注入する基礎インスリンを患者に適した量に自動で調整する。

システムが推奨する追加インスリン量を計算・表示

 食事の際には患者自身による追加インスリン注入が必要になるが、糖質量と血糖値の入力をボタン操作で行うことで、システムが推奨するインスリン量を計算し表示する。この機能により、血糖値が最適な目標範囲内にある時間(Time in Range、TIR)を最大化するため、日中だけでなく夜間も含め24時間、血糖値を目標範囲内に保つためのサポートをすることが可能となり、その結果として患者のQOL向上が期待される。

リアルタイムCGMのデータなどをスマホで確認し共有もできる

 Bluetooth技術を搭載しており、スマートフォン連携も可能。患者は「ミニメド モバイルアプリ」を使用することで、リアルタイムCGMから得られるインスリンポンプデータの一部を、インスリンポンプを取り出すことなく、アプリを利用しスマートフォンで確認できる。
 また、「ケアリンク コネクトアプリ」を介して家族や保護者など任意の相手にリアルタイムでデータを共有したり、センサグルコース値が目標範囲外の場合はアプリより通知を送信したりすることも可能。
 さらに、これらのデータは、主治医とリアルタイムに共有することもできるため、診療時間の短縮やオンライン診療への活用も期待できる。

 日本ではインスリン治療を行っている糖尿病患者数は100万人以上と推定されているが、そうしたなかには血糖コントロールに対する身体的・心理的負担を日常的に強く感じている患者が多くいる。患者はその時々の体調や運動量、心理状況、食事の量と質、女性であれば生理周期などさまざまな要因を考慮の上、インスリンの適切な量を自身で考え、投与し、高・低血糖の両方を防ぎながらコントロールすることを目指すが、それは言葉であらわすほど容易なことではない。

 「ミニメド770Gシステムの登場によって、ついに日本でもHCLテクノロジーの効果を享受できるようになります。インスリン治療において血糖値を適切な範囲に維持することは患者・医療者の双方にとっての目標であり、大きな課題でした」と、東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科の西村理明教授は述べている。

 「生活、仕事、体調などで必要なインスリン量は常に変化します。したがって、医師の指示通りにインスリンを注射・注入していても、高・低血糖はさまざまな要因によって起こりえます。しかし、今回のHCLの登場によって、インスリン治療は大きく飛躍するでしょう。機器が自動で基礎インスリン量の調整を行い、血糖値を目標範囲内に維持するサポートをしてくれるのです」としている。

 「待ちに待った日本初のハイブリッドクローズドループを本邦で導入できることを大変喜ばしく思います。どんな人でも、血糖変動は2日と同じ日はなく、多くの患者が日々の血糖コントロールに苦労されてきました。患者が“インスリン治療に合わせた生活”から“生活に合わせたインスリン治療”への転換ができ、学業や仕事、遊びに対してより自由で、負担が少ない生活がおくれるよう、サポートを続けてまいります」と、同社では述べている。

 なお、「ミニメド770Gシステム」は米国をはじめ諸外国ではすでに販売され、インスリンポンプによる治療を必要とする多くの糖尿病患者に使用されている。

【スマートガード・スマートガード オートモード】

 「ミニメド770Gシステム」に搭載された、基礎インスリンの自動調整・追加インスリンの注入量決定サポートを行うことで、高・低血糖を防ぎながらセンサグルコース値を目標範囲内に維持するためのHCLテクノロジーの機能名称。

【ハイブリッドクローズドループ(HCL)】

 インスリンポンプと連動したCGMより5分ごとに得られるセンサグルコース値にもとづき、システムが基礎インスリン量を自動調整し、高・低血糖を軽減、血糖値を目標範囲に維持するためのテクノロジー。ミニメド770Gシステムでは「スマートガード オートモード」として搭載されている。
 たとえばセンサグルコース値が高値になることを予測すると基礎インスリンの注入量を増量、センサグルコース値が低値になることを予測するとインスリンの注入量を減量するなど、日中だけでなく夜間帯も含めた24時間、血糖値を目標範囲内に保つ(センサグルコース値を70~180mg/dLに保つ)ためにサポートする。
 一方、食事を摂取した際に必要となる追加インスリンは、手動で血糖値と見積もった糖質量を手動入力し、患者自身が推奨インスリン量を注入する必要があるため、「人工膵臓」とも呼ばれる「クローズドループ」に対し、「ハイブリッドクローズドループ」と呼称している。

 糖尿病治療におけるHCLの有用性・安全性に関してはすでに海外で多くの研究が行われている。たとえば思春期・成人・小児の1型糖尿病患者を対象にした二つの臨床試験では、在宅でHCLを使用した結果、センサグルコース値が目標範囲である70~180mg/dLにとどまる時間(TIR)は増加(改善)し、目標範囲を下回る時間(TBR)や目標範囲を上回る時間(TAR)は減少(改善)したことが示された。両試験とも試験期間中にインスリン治療にともなう大きなリスクである重症低血糖および糖尿病性ケトアシドーシスの発生はなく、これによりHCLはセンサグルコース値をより長い時間目標範囲に維持し、HbA1cを低下させることが示されている。

【TIR(Time in Range)】

 CGMによる測定期間中、 センサグルコース値がどの程度目標範囲内に入っているかを示す指標で、CGMの普及にともない重視されるようになった。
 米国糖尿病学会(ADA)は2019年に、「CGM使用時の1型および2型糖尿病の治療目標としてTIRを70mg/dLから180mg/dLとし、HbA1c7%の患者の場合は全体の70%の時間(CGMの測定地点)がこの域内に収まること」というガイドラインが出し、いっそう注目されるようになった。
 TIRが高いほど低血糖時間・高血糖時間・血糖変動が短小であり、TIRが1%改善すると、24時間のうちの1%、つまり14.4分、この目標範囲から逸脱する(下回るまたは上回る)時間が減少し、目標範囲に収まる時間が延びたことを示す。なお、スマートガード オートモードを用い、14歳から75歳を対象にした臨床試験ではTime in Range達成率は72.2%だった。

日本メドトロニック

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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