「SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」を改訂 新たな副作用報告と対応策を盛り込む 日本糖尿病学会

2022.08.03
 日本糖尿病学会の「SGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会」は7月26日に、「SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」の改訂版を公表した。このRecommendationは2014年6月に策定され、今回が6度目の改訂となる。

ケトアシドーシスなど新たな副作用報告などをふまえ改訂

 日本糖尿病学会の「SGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会」は7月26日に、「SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」の改訂版を公表した。このRecommendationは2014年6月に策定され、今回が6度目の改訂となる。

 SGLT2阻害薬は、近位尿細管でのブドウ糖の再吸収を抑制することで、尿糖排泄を促進し、血糖低下作用を発揮する。最初のSGLT2阻害薬は日本では2014年4月に発売され、現在は6成分7製剤が臨床使用されている。

 SGLT2阻害薬は、インスリンとは独立した作用を示すため、単独使用では低血糖をきたす可能性は低いが、尿路・性器感染症などの特徴的な副作用が認められている。さらに、広汎で複雑な代謝や循環への影響をきたしうることから、重篤なものを含む多様な副作用発症への懸念がもたれていた。

 それをふまえ同委員会が発足し、2014年6月に「SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」を策定し公表した。その後の新たな副作用報告などをふまえ改訂を重ねている。

 SGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬の配合薬が、2017年9月以降発売され、臨床使用されており、同Recommendationの多くの留意点は、これらの配合薬についても該当するとしている。

 さらに、2018年12月以降、一部のSGLT2阻害薬(配合薬を除く)が成人1型糖尿病患者でのインスリン製剤との併用療法として適応を取得しており、ケトアシドーシスのリスク増加が報告されている。日本では2022年4月より、SGLT2阻害薬服用中の1型糖尿病患者の在宅での血中ケトン体自己測定が可能となった。

 また、海外ではSGLT2阻害薬の成人1型糖尿病への適応申請に対し、欧州医薬品庁(EMA)ではBMIが27以上に限定した承認であり、米食品医薬品局(FDA)では承認が見送られた。

 こうした事実を重く受け止め、「1型糖尿病患者への使用に際しては、十分な注意と対策が必要」と、同委員会では述べている。

 なお、同Recommendationは、糖尿病治療でのSGLT2阻害薬の適正使用に関するものであり、糖尿病以外の疾患に対する治療目的でSGLT2阻害薬を使用する場合には、該当する疾患の診療に係る各学会の見解や、国内ならびに海外の添付文書の記載を参考にするよう呼びかけている。

 今回、改訂されたRecommendationは以下の通り。これに加えて、副作用の事例と対策[重症低血糖、ケトアシドーシス、脱水・脳梗塞等、皮膚症状、尿路・性器感染症]も公開されている。

Recommendation

1. 1型糖尿病患者の使用には一定のリスクが伴うことを十分に認識すべきであり、使用する場合は、十分に臨床経験を積んだ専門医の指導のもと、患者自身が適切かつ積極的にインスリン治療に取り組んでおり、それでも血糖コントロールが不十分な場合にのみ使用を検討すべきである。

2. インスリンやSU薬等インスリン分泌促進薬と併用する場合には、低血糖に十分留意して、それらの用量を減じる。患者にも低血糖に関する教育を十分行うこと。

3. 75歳以上の高齢者あるいは65歳から74歳で老年症候群(サルコペニア、認知機能低下、ADL低下など)のある場合には慎重に投与する。

4. 脱水防止について患者への説明も含めて十分に対策を講じること。利尿薬の併用の場合には特に脱水に注意する。

5. 発熱・下痢・嘔吐などがあるときないしは食思不振で食事が十分摂れないような場合(シックデイ)には必ず休薬する。また、手術が予定されている場合には、術前3日前から休薬し、食事が十分摂取できるようになってから再開する。

6. 全身倦怠・悪心嘔吐・腹痛などを伴う場合には、血糖値が正常に近くてもケトアシドーシス(euglycemic ketoacidosis; 正常血糖ケトアシドーシス)の可能性があるので、血中ケトン体(即時にできない場合は尿ケトン体)を確認するとともに専門医にコンサルテーションすること。特に1型糖尿病患者では、インスリンポンプ使用者やインスリンの中止や過度の減量によりケトアシドーシスが増加していることに留意すべきである。

7. 本剤投与後、薬疹を疑わせる紅斑などの皮膚症状が認められた場合には速やかに投与を中止し、皮膚科にコンサルテーションすること。また、外陰部と会陰部の壊死性筋膜炎(フルニエ壊疽)を疑わせる症状にも注意を払うこと。さらに、必ず副作用報告を行うこと。

8. 尿路感染・性器感染については、適宜問診・検査を行って、発見に努めること。問診では質問紙の活用も推奨される。発見時には、泌尿器科、婦人科にコンサルテーションすること。

(日本糖尿病学会 SGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会「SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」より引用)

一般社団法人 日本糖尿病学会

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