糖尿病の新しい分類「5型糖尿病」 栄養不足に関連する糖尿病 国際糖尿病連合(IDF)が正式に発表

2025.04.23

 国際糖尿病連合(IDF)は、4月7日~15日にタイのバンコクで開催した世界糖尿病会議2025で、糖尿病の新たな分類である「5型糖尿病 (type 5 diabetes)」を認定することを公式に発表した。

 5型糖尿病は、とくに小児期や若年期に発症する、インスリン欠乏と代謝コントロールの不良を特徴とする重度のインスリン欠乏性糖尿病(SIDD:severe insulin-deficient diabetes)。

 5型糖尿病は、慢性的な栄養不足による膵臓の発達障害に起因すると考えられており、1型糖尿病や2型糖尿病などとは区別される。

5型糖尿病の成因は長期にわたる栄養不足による膵臓の発達障害

 国際糖尿病連合(IDF)の発表によると、5型糖尿病を世界中で2,000万人から2,500万人が発症しており、とくにアジアやアフリカなどの地域で多い。5型糖尿病を認定したことは、今後その病態の解明が進み、とくに低・中所得国(LMIC)での痩せや栄養不足のある小児や若年者に糖尿病がどのように影響するかを理解するうえで、重要な節目となるとしている。

 IDFは、5型糖尿病の正式な診断基準と診療ガイドラインを策定するためのワーキンググループを立ち上げた。今後は世界的な研究レジストリを設立し、医療従事者を育成するための教育モジュールの開発にも取り組む。

 5型糖尿病ワーキンググループは、米国のアルバート アインシュタイン医科大学グローバル糖尿病研究所内分泌学のMeredith Hawkins教授と、インドのクリスチャン医科大学内分泌学のNihal Thomas教授が共同議長を務めている。

 5型糖尿病は、長期にわたる栄養不足による膵臓の発達障害に起因すると考えられており、70年以上前からとくに貧困国で観察されていたにもかかわらず、適切な識別を行われておらず、しばしば1型あるいは2型糖尿病と誤分類されてきた。

 以前は、インスリン抵抗性が原因で発症すると考えられていたが、Hawkins教授やThomas教授らが主導した研究により、その独特な代謝プロファイルが確認され、1型および2型糖尿病とは根本的に異なることが明らかにされた。研究成果は、2022年に「Diabetes Care」に掲載された。

 5型糖尿病はインスリン欠乏症だが、インスリン抵抗性とは関連がなく、多くの患者はインスリン療法ではなく経口薬で糖尿病を管理できる可能性がある。5型糖尿病は主に食料資源の乏しい地域でみられるため、この費用対効果の高いアプローチは、患者数の増加に対処するのに苦慮している地域で重要な役割を果たす可能性があるとしている。

 「このタイプの糖尿病患者は、インスリン分泌能力に深刻な欠陥があることが判明した。これまで知られていなかったことで、今回の認定はこの疾患に対する認識と治療方法に革命をもたらす可能性がある」と、Hawkins教授は指摘する。

 「栄養不足に関連する糖尿病は、これまで十分な診断が行われておらず、発症した患者は診断後1年以上生きられないことも多かった。こうした状況を受け、世界保健機関(WHO)は1985年に、栄養不足関連糖尿病を糖尿病のひとつの形態として認定したが、追跡研究と裏付けとなるエビデンスが不足していたため、1999年にこの指定を解除した」。

 「5型糖尿病の患者は若く痩せているので、1型糖尿病ではないかと疑われることがあるが、インスリン療法はこの疾患の患者には効果がなく、場合によっては危険な低血糖を引き起こすことになる。一般的に肥満との関連が多い2型糖尿病ともみなされない」としている。

 IDF理事長でドイツ糖尿病研究センター教授のPeter Schwarz氏は次のように述べている。
 「5型糖尿病の認定は、世界での糖尿病への取り組みを促進する歴史的な転換点となる。長きにわたり、多くの患者がこの疾患に罹患しているにも関わらず、適切なケアへのアクセスは困難だった。5型糖尿病ワーキンググループの設立により、我々はこの状況を是正するための断固たる措置を講じる。それは公平性、科学、そして命を救うことに直結するものだ」。

International Diabetes Federation (IDF) World Diabetes Congress 2025
IDF launches new type 5 diabetes working group (国際糖尿病連合 2025年4月15日)
Einstein Research Leads to Designation of New Type of Diabetes (アルバート アインシュタイン医科大学 2025年4月8日)
An Atypical Form of Diabetes Among Individuals With Low BMI (Diabetes Care 2022年5月27日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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