肥満症治療でのセマグルチド使用は精神疾患リスクとならない うつ症状や自殺念慮のリスクは増大せず

2024.09.18
減量目的でのセマグルチド使用は精神疾患リスクとならない

 GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)であるセマグルチドによる肥満治療において、うつ症状や自殺念慮、自殺行動のリスクは増大しないとする、米ペンシルベニア大学ペレルマン医科大学院のThomas A. Wadden氏らの論文が「JAMA Internal Medicine」に9月3日掲載された。

 過去に開発されてきた肥満治療薬の多くが、食事摂取量の調節に関与している脳領域に作用するため、精神疾患リスクに影響を及ぼす可能性のあることが報告されている。

 GLP-1RAについてはその開発段階で精神疾患関連の有害事象のリスク増大は認められておらず、米食品医薬品局(FDA)や欧州医薬品庁(EMA)が行っている市販後のモニタリングからもリスク増大は示唆されていないが、安全性に関する確実なエビデンスの形成には至っていない。

 これを背景にWadden氏らは、セマグルチドの肥満治療への適用に関する第3相臨床試験であるSTEP(Semaglutide Treatment Effect in People With Obesity)1、2、3、5のデータを用いて、同薬2.4mg/週の投与を継続した場合の精神医学的安全性を検討した。解析対象は、STEP1、2、3の参加者3,377人(平均年齢49±13歳、女性69.6%)と、STEP5の参加者304人(同47±11歳、77.6%)。

 STEP1、2、3のベースライン時点において、うつレベルの指標であるPHQ-9のスコアは、セマグルチド群が2.0±2.3、プラセボ群が1.8±2.3であり、両群ともにうつ症状が見られないか最小限だった。

 介入68週時点のPHQ-9スコアは同順に2.0±2.9、2.4±3.3であり、治療間の差の推定値(estimated treatment difference)は-0.56[95%信頼区間 -0.81~-0.32]だった(P<0.001)。さらに、セマグルチド群はプラセボ群と比較して、ベースラインから68週までにPHQ-9の評価による、うつ病のより重篤なカテゴリーに移行するオッズが有意に低かった[オッズ比 0.63、同 0.50~0.79、P<0.001]。

 コロンビア自殺重症度評価尺度に基づく評価では、介入期間中に自殺念慮や自殺行動を報告した参加者は1%以下であり、セマグルチド群とプラセボ群との間に有意差は認められなかった。また、精神疾患関連の有害事象の発現率も、グループ間でおおむね同等だった。なお、STEP5のデータ解析の結果も、ほぼ同様であった。

 以上をもとにWadden氏は、「STEP試験のデータに関するわれわれの新たな解析結果は、重大な精神衛生上の懸念のない個人がセマグルチドを用いた場合に、うつ症状や自殺念慮、自殺行動のリスクが増大しないことを意味している」と述べている。

 なお、複数の著者が、セマグルチドのメーカーであり本研究の研究資金を提供したノボノルディスク社を含む、医薬品企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

[HealthDay News 2024年9月3日]

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