2~6歳の1型糖尿病患児にもCGMとポンプを組合わせた「人工膵臓」は有効
2~6歳の1型糖尿病患児でのハイブリッド型クローズドループシステムの有効性 ハイブリッド型クローズドループ(HCL)インスリン伝達システムにより、2~6歳の1型糖尿病患児の血糖コントロールが改善したとする論文が、「The New England Journal of Medicine」に3月16日掲載された。米コロラド大学オーロラ校のR. Paul Wadwa氏らの研究報告。
6歳未満の1型糖尿病患児では、食事摂取量や身体活動量に合わせたインスリン投与量の繊細な調整が必要とされ、また本人が低血糖を訴えることが困難であるため、血糖管理が乱れやすい。
HCLシステムは、連続血糖測定(CGM)とインスリンポンプが連動したシステムで、変動する血糖値の補正に必要なインスリン量がアルゴリズムによって判断され、持続的に自動投与される。HCLシステムの血糖管理上の有用性を示すエビデンスが蓄積されてきているが、6歳未満の1型糖尿病患児での有効性や安全性のデータはまだ少ない。
今回の研究では、Control-IQ(Tandem Diabetes Care社)というアルゴリズムを備えたシステムが用いられた。また、本研究は新型コロナウイルス感染症パンデミックのため、多くの患児・保護者に対して対面診療ではなく遠隔診療によって、機器の取り扱い方法が指導されたという点も特徴といえる。
研究参加の適格条件は、参加登録の少なくとも6カ月以上前に1型糖尿病と診断され、インスリン治療を継続していた2歳以上6歳未満の患児で、体重9.1kg以上、1日の総インスリン投与量が5単位以上であること。HCLを使用中の患児は除外された。
HCL群(68人)と、従来療法群〔従来型のインスリンポンプ療法または頻回インスリン注射療法(34人)〕とに、無作為に2対1の割合で割り付けて13週間介入。HCL群の機器の取り扱い方の指導の8割以上は遠隔診療で行われ、その後の介入期間の診療も9割以上が遠隔診療だった。なお、従来療法群にもCGMデバイスを支給し、取り扱い方を指導した。ベースライン時点の血糖関連指標に有意差はなかった。
介入13週後、主要評価項目として設定されていた血糖値が70~180mg/dLの範囲内にある時間の割合は、HCL群69.3±11.1%、従来療法群55.9±12.6%であり、前者の方が有意に高値だった(P<0.001)。調整平均差は12.4パーセントポイントであり、この差は、1日のうち血糖値が目標範囲内にある時間が約3時間異なることを意味する。
副次的評価項目についても、HbA1cは同順に7.0±0.8%、7.5±0.9%、平均血糖値は155±20mg/dL、174±22mg/dL、血糖値が250mg/dLを超過した時間の割合は8.4±7.2%、15.0±10.9%であり、いずれもHCL群の方が良好だった(全てP<0.001)。ただし、血糖値が70mg/dL未満の割合は3.0±1.8%、3.0±2.2%であり、有意差がなかった(P=0.57)。
安全性に関しては、何らかの有害事象が認められた患者の割合が、HCL群60%、従来療法群32%だった(P=0.001)。重篤な有害事象として、重症低血糖がHCL群で2件、従来療法群で1件発生、糖尿病性ケトアシドーシスがHCL群で1件発生した。
本論文に対する付随論評を寄せた、パドヴァ大学(イタリア)のDaniela Bruttomesso氏は、「報告された研究結果は、幼い1型糖尿病患児においてもHCLシステムを用いた血糖管理が、標準的なケアよりも優れていることを示唆している」と述べている。
[HealthDay News 2023年3月17日]
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