骨粗鬆症治療薬デノスマブが2型糖尿病リスクを低下 破骨細胞を抑制 グルコース代謝の改善に関連か
骨粗鬆症治療薬デノスマブが2型糖尿病の発症リスクの低下と関連
骨粗鬆症治療薬であるデノスマブの使用は、ビスホスホネートの使用に比べ、2型糖尿病の発症リスクの低下と関連していることが、2万5,339人を対象とした集団ベースのコホート研究で示された。
骨芽細胞に発現するRANKLは、破骨細胞から放出されるRANKを認識する受容体として機能し、骨芽細胞分化の促進や骨形成に寄与している。骨粗鬆症では、骨芽細胞によるRANKLの発現が増加している。
デノスマブは、RANKLを標的とするヒト型IgG2モノクローナル抗体で、ヒトRANKLに特異的に結合することで、RANKLのRANKへの結合を阻害し、破骨細胞の活性化を抑制する。その結果、骨吸収が抑制され、皮質骨および海綿骨の骨量が増加し、骨強度が増強するとみられる。
最近の研究で、RANKLレベルの上昇は2型糖尿病の発症リスクの増加と相関する一方、RANKL/RANKシグナル伝達の阻害は、2型糖尿病あるいは前糖尿病の患者におけるグルコース恒常性の改善と関連していることが示唆されている。
中国Chinese PLA General Hospitalなどは今回、英国のプライマリケアデータベースであるIQVIA Medical Research Data (IMRD)の1995~2021年のデータを使用し、別の骨粗鬆症治療薬(主にビスホスホネート)を使用してからデノスマブに切り替えた、あるいはデノスマブにより治療を開始した4,301人の患者(平均年齢69歳、女性94%)と、ビスホスホネートを使用し続けた2万1,038人の患者(平均年齢72歳、女性81%)を比較した。主要アウトカムは、診断コードで定義された2型糖尿病の発症。
その結果、デノスマブ使用者の2型糖尿病の発症率は1,000人年あたり5.7人(95%信頼区間 4.3~7.3人)だったのに対し、ビスホスホネート使用者では8.3人(同 7.4~9.2人)となり、デノスマブ使用者はビスホスホネート使用者よりも2型糖尿病の発症リスクが低いことが示された(ハザード比 0.68、同 0.52~0.89)。
さらに、前糖尿病患者でも、デノスマブ使用者はビスホスホネート使用者よりも2型糖尿病の発症リスクが低く(ハザード比 0.54、95%信頼区間 0.35~0.82)、BMIが30以上の患者でも同じ傾向が示された(同 0.65、同 0.40~1.06)。
「今回の集団ベースの研究で、骨粗鬆症の成人でのデノスマブの使用は、ビスホスホネートの使用に比べ、2型糖尿病の発症リスクの低下と関連することが示された。デノスマブがビスホスホネートに比べ、グルコース代謝にさらなる利点をもたらす可能性が、集団レベルの調査で示された」と、同病院のHouchen Lyu氏は述べている。