有害金属への曝露は血糖上昇リスク

2024.10.01
 ヒ素、鉛、カドミウム、ニッケル、スズといった有害金属や必須元素への曝露が、血糖恒常性に影響を及ぼす可能性のあることが報告された。ある時点でのそれらの金属の尿中濃度の高さが、その後の血糖上昇リスクと関連しているという。

 米イリノイ大学シカゴ校のMargaret C. Weiss氏らの研究によるもので、詳細は「Diabetes Care」に9月15日掲載された。

 金属および半金属(metalloid)への曝露は、2型糖尿病のリスク上昇など、健康へ悪影響をもたらすことが報告されている。ただしこれまでの研究は、横断的研究が中心であり因果関係が不明であったり、検出力が不足していたりするものが多かった。

 米国には、医療アクセスという点で不利な立場にあり2型糖尿病の罹患率が高い人種/民族集団が存在し、そのような集団のなかには、金属曝露のリスクも高い生活環境で暮らしていてこのトピックの検討に適している人々が存在する。しかしこれまで、そのような人々を対象とするリスク評価研究は行われていない。

 以上を背景としてWeiss氏らは、そのような集団のひとつであるメキシコ系米国人の成人コホートにおいて、尿中の有害金属や必須元素、および有害金属混合物のベースラインレベルと、その後の糖代謝の変化との関連を検討した。

 研究参加者は510人で、尿中レベルを測定した金属は、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ヒ素、セレン、モリブデン、カドミウム、スズ、鉛。ベースライン測定後3年間にわたって糖代謝指標の追跡調査を行った。解析には線形混合効果モデルを用い、HbA1c、空腹時血糖値、負荷後血糖値の月ごとの変化を評価。また複数の統計学的手法を用いた検討も行った。

 交絡因子調整後、尿中のニッケル、銅、ヒ素、セレン、モリブデン、スズのレベルが高いほど、追跡開始後のより早期に血糖値の上昇が生じていたことが確認された。

 また、ニッケル、ヒ素、カドミウム、スズ、鉛という有害金属混合物の尿中レベルが高いほど、糖負荷後の血糖上昇が、より早期に生じていた。

 さらに、尿中ヒ素レベルの高低で糖負荷後血糖値を比較した結果に基づく推算から、正常耐糖能から耐糖能異常への進行が最大で23ヵ月の差が生じ、耐糖能異常から糖尿病への進行では最大で65ヵ月の差が生じると予測された。

 以上より、2型糖尿病ハイリスク集団であるメキシコ系米国人では、有害金属への曝露や必須元素の体内レベルの高さが経時的な糖代謝の急速な悪化と関連しており、2型糖尿病発症を増加させる可能性が示された。またこのリスクは現状において、過小評価されていると考えられた。

 著者らは、「われわれの研究結果は、金属が糖代謝に及ぼす有害な影響を明らかにし、個人レベルおよび政策レベルで糖尿病の環境要因への対策を推し進める必要性を強調している」と述べている。

 なお、著者の1人が、米国のヘルスケア関連企業、CVS/Health社との利益相反(COI)に関する情報を開示している。

[HealthDay News 2024年9月23日]

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