「フィアスプ注」の適正使用を呼びかけ インスリンポンプで使用時にゲル化 重篤な高血糖の事例が報告
フィアスプ注をインスリンポンプで使用する場合は適正使用を
「フィアスプ注100単位/mL」(バイアル製剤)は、持続皮下インスリン注入(CSII)で使用可能な、超速効型インスリンアナログ注射剤。
2022年2月28日までに、「フィアスプ注 ペンフィル」(カートリッジ製剤)から注射液を抜き取って、インスリンポンプに充填し投与した患者で、インスリンポンプにセットされた注射液にゲル化がみられ、重篤な高血糖に至った事例が1例報告された。
また、2022年2月28日までに、国内でフィアスプ注100単位/mL(バイアル製剤)で注射液のゲル化がみられたという事例が8例報告されている。この8例では、高血糖などの有害事象は報告されていない。
注射液のゲル化により、インスリンポンプ内に閉塞が生じ、必要量のインスリンが投与されない状態となり、重篤な高血糖関連事象をきたす可能性がある。
そのためノボ ノルディスクファーマは、医療従事者に下記の注意事項を呼びかけるともに、患者への指導についても注意を促している。
なお、報告された8例の保存状況の情報は得られておらず、ゲル化の原因については現在調査中だとしている。
- インスリンポンプを使用している患者さんに対し、フィアスプ注100単位/mL(バイアル製剤)の注射液中に付着物、浮遊物、塊、薄片などがみられた場合には、その注射液は使用しないように指導してください。
- インスリンポンプを使用している患者さんに対し、インスリンポンプの内部を確認し、注射液の外観に変化(付着物、浮遊物、塊、薄片など)がみられた場合は、ポンプの部品(リザーバーまたはチューブ)を交換し、これまで使用していたフィアスプ注100単位/mL(バイアル製剤)は使用せず、新しいフィアスプ注100単位/mL(バイアル製剤)に変更していただくように指導してください。
- インスリンポンプが適切に作動しない場合に、高血糖および糖尿病性ケトアシドーシスに至る危険性があります。インスリンポンプ使用患者さんに対し、インスリンポンプの動作状況および患者さん自身の血糖コントロール状況を確認するように指導してください。
- ポンプシステムが適切に作動しない場合に備え、他のインスリン注射手段(ペン型インスリン注入器製剤等)を常に携帯するように指導してください。
- フィアスプ注 ペンフィル(専用ペン型注入器を用いて使用するカートリッジ製剤)およびフィアスプ注 フレックスタッチ(既に薬剤がセットされたペン型注入器製剤)は、インスリンポンプでは使用できません。インスリンポンプの使用患者さんに対してペンフィルおよびフレックスタッチを処方することや、患者さんに対してカートリッジ内に充填された注射液をシリンジで抜き取って使用する指導は行わないでください。
これに合わせて、日本糖尿病学会と日本糖尿病協会は、「以前から、インスリンポンプにおけるインスリンのゲル化に関しての報告は散見されます。しかしながら、インスリンのゲル化によって、インスリンポンプ内に閉塞が生じ必要量のインスリンが投与されない状態となり、重篤な高血糖関連事象をきたす可能性があります」との見解を公表した。
「現時点では、フィアスプ注のゲル化の原因は特定されておりません。したがいまして、インスリンポンプでフィアスプ注を使用中の患者さんにおいては、ゲル化の原因と予防法が明らかになるまでは、可能であれば他の代替インスリン(ヒューマログ、ノボラピッド、アピドラ、ルムジェブ等)への変更を推奨いたします」としている。
「また、カートリッジ製剤から注射液を抜き取ってインスリンポンプに装填する事はしないよう、患者さんへのご指導も併せてお願いいたします」。
フィアスプ注100単位/mL 添付文書 インタビューフォーム (医薬品医療機器総合機構)
フィアスプ注をインスリンポンプ(CSII)で使用時のゲル化に関する注意喚起 (一般社団法人 日本糖尿病学会)
ノボ社フィアスプ注におけるインスリンポンプ(CSII)での使用時の注意喚起 (公益社団法人 日本糖尿病協会)
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