かかりつけ薬剤師制度の使用で高齢患者の死亡リスク低下 全国規模のコホート研究 昭和医科大学

2026.03.25
昭和医科大学は、高齢者がかかりつけ薬剤師をもつ有益性について、全国規模の医療情報データベースを用いて検証し、その結果を発表した。入院と死亡を合わせたリスクに差は認められなかったが、死亡のみを対象とした分析においては、かかりつけ薬剤師をもつ高齢者の死亡リスクが低い傾向を示したという。

 日本では2016年4月から、「かかりつけ薬剤師制度(Family Pharmacist System:FPS)」が導入された。保険薬局利用者に対し、特定の薬剤師がかかりつけの役割を担うことで、継続的かつ一貫した薬学的サポートを行い、疾病の治療をより良い形で進めていくことを目的としたもので、この制度により、薬物治療の適正化や医療サービスの充実が期待されている。一方で、その分利用者は従来よりも多くの医療費を負担する必要があり、それに見合った実際の有益性があるのか、その検証が求められていた。

※2026年6月以降は、かかりつけ薬剤師の選択のみでは追加費用は発生せず、服薬調整やフォローアップ実施時に費用が発生する仕組みに変更される見込みとなっている。

 そこで本研究では、かかりつけ薬剤師をもつことの有益性を評価するため、全国規模の医療情報データベースである「DeSC保険者データベース」を用いて、コホート研究を実施。慢性心血管疾患または内分泌疾患を有する高齢患者におけるFPSの利用と死亡または入院リスクとの関連性を検証した。

 本研究は、観察開始前の1年間において、高血圧、2型糖尿病、脂質異常症、心不全、狭心症、非弁膜症性心房細動、またはその他の不整脈の治療のため保険薬局を少なくとも2回利用していた75歳以上の患者を対象とした。対象者のうち、FPSの使用群と非使用群を、時間条件付き傾向スコアマッチングにより1対1で22,557人ずつ、計45,114人を抽出した。平均年齢は82.8歳、女性が71.5%を占めた。主要評価項目は全死亡または全入院の複合エンドポイント、副次評価項目は全死亡、全入院などとし、Cox比例ハザードモデルを用いてハザード比(HR)と95%CIを推定した。

 結果、全死亡または全入院の複合イベント発生率は、FPS使用群、非使用群ともに1000人年あたり216.2件であり、両群に有意差は認められなかった(HR 1.00、95%CI 0.97-1.04)。一方、全死亡のみを対象とした場合の発生率はFPS使用群で1000人年あたり33.9件、非使用群で37.0件であり、FPS使用群でわずかに低かった(HR 0.91、95%CI 0.85-0.99)。サブグループ解析では、女性(HR 0.88 、95% CI 0.79~0.98)、心不全治療中の患者(HR 0.83、95%CI 0.74〜0.94)で死亡リスク低下がより顕著であった。

 本研究では、全入院と全死亡の複合リスクに差は認められなかったが、死亡のみを対象とした分析では、かかりつけ薬剤師をもつ人で死亡リスクが低い傾向が示された。これらの結果は因果関係を証明するものではなく、仮説生成段階にあるものの、薬剤師による継続的な医療サービスが高齢者の健康に寄与する可能性が示唆された。

 研究グループは「かかりつけ薬剤師をもつことの有益性のみを評価しており、費用とのバランスは評価できていない。費用に見合った価値があるのか検証していくことは、利用者の納得感や薬剤師の業務負荷に対する理解を得ていくために重要である」としている。

 本研究は、昭和医科大学大学院薬学研究科薬剤疫学分野講師 池谷怜氏らにより実施され、研究成果が2026年2月23日付で「JAMA Network Open」に掲載された。

[ 糖尿病リソースガイド編集部 / 日本医療・健康情報研究所 ]

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