糖尿病治療薬「GLP-1受容体作動薬」を適応外使用する医療機関の増加を懸念 日本医師会
オンライン診療での自由診療によるGLP-1受容体作動薬の適応外使用は慎むべき
今村聡副会長は、この問題に関して2020年6月の定例記者会見でも問題点を指摘しており、(1) 健康な人が医薬品を使用することはリスクがある、(2) 医薬品の適正使用の観点から、このような行為を禁止すべき、(3) 医薬品は、治療が必要で効果が期待される人に対し投与されるべきであり、国民の健康を守るべき医師が治療の目的を外れた使い方をするのは医の倫理に反する――といった意見を表明するとともに、厚労省に対して、適応外使用が常態化している医療機関への納入調査ならびに医薬品の適正な流通確保を要望していることを説明した。
さらに、現在、インターネット上で横行している不適切な医療・医薬品広告を取り締まるネットパトロールついては、「限界がある」とした上で、「国が認めている保険診療さえ安全に行われれば、国民の健康が守られたと言えるのか。不適切な医学的行為が横行している状況は、真に国民の安全が守られているとは言えない」との認識を示すとともに、このような行為を行う医師がいることについても、「遺憾に思う」との考えを示した。
また、オンライン診療に関しては、「治療が必要でありながら、医療にアクセスできない患者に対し、必要な医療を提供する手段として有効活用されるべきオンライン診療が、エビデンス不十分な医学的処置の横行に拍車をかけている」と強調。厚労省始め関係機関に対し、この問題を真摯に受け止めることを求めた。
加えて、現在、医薬品の安定確保が課題となっていることにも言及し、本来、治療に用いるべき医薬品が不適切に流通し、健康な人が使用するような状況は日本医師会として看過できないとして、国に対し、保険外診療の実態把握、とくに医薬品の流通ならびに適応外使用による健康被害に関する早急な調査と実態把握を行うよう要望した。
そのうえで、同副会長は保険外診療について、「がんや難病など、生命に関わる病のため、それを選択せざるをえない患者も一定数いるが、このような場合以外の不適切な投薬を防ぐ制度が必要なのではないか」と主張。メディアに対しては、医薬品の適応外使用の実態と、それにより起こり得る健康被害を啓発するための周知への協力を要請した。
自由診療におけるオンライン診療の不適切事例について(医薬品の適応外使用)
今村聡副会長