健診で糖尿病指摘後1年以内の「早期受診」で10年間の心血管疾患リスクが27%低下 横浜市立大学ら

2026.01.22
横浜市立大学らの研究グループは、日本の大規模レセプトデータを用いて、健康診断で糖尿病を指摘された循環器疾患の既往がない人々を対象に解析を実施。糖尿病指摘後1年以内に医療機関を受診した人は、受診しなかった人と比べ、10年間の心血管疾患の発症リスクが27%低かったとの研究結果を報告した。

 2型糖尿病は心血管疾患(虚血性心疾患や脳卒中)の主要なリスク因子であるため、早期からの適切な管理が重要である。日本では特定健康診査(メタボ健診)などの普及により、糖尿病の早期発見が可能になっている。しかし、自覚症状が乏しいことなどから、健診で異常を指摘されても医療機関を受診しない、あるいは受診が遅れるケースが少なくなく、公衆衛生上の課題となっている。

 健診で異常を指摘された後に「早期受診」することにより、健康寿命が延長することが期待されるが、倫理的に「受診させないグループ」を意図的に作る介入(RCT)は実施できない。また、従来の観察研究の手法では「健康意識が高い人ほど受診する」「逆に、具合が悪い人ほど受診する」といったバイアスの影響を受けやすく、早期受診の効果を評価することは困難であった。

 本研究では、株式会社JMDCが提供する累計1,200万人規模のレセプトデータ(JMDC Claims Database)を用いて、2005年から2021年の間に健診で初めて糖尿病(HbA1c 6.5%以上または空腹時血糖126mg/dL以上)と判定された40歳から74歳の男女148,288名を対象とした。

 研究手法として、観察データから臨床試験を可能な限り模倣する手法である「標的試験エミュレーション(Target Trial Emulation)」を採用した。対象者を「1年以内に受診した群(早期受診群)」と「1年以内に受診しなかった群(非受診群)」に分け、年齢、性別、検査値、生活習慣、行動変容への意欲など30以上の変数を用いて重み付けすることで統計学的に背景因子を均等にした上で、その後10年間の心血管疾患の発症リスクを比較した。

 解析の結果、早期受診群は非受診群と比較して、複合心血管疾患(虚血性心疾患または脳卒中)の発症リスクが27%低いことが示された(リスク比 0.73)。また、そのメカニズムとして、早期受診群では1年後の時点で糖尿病治療薬だけでなく、高血圧や脂質異常症の治療薬が適切に開始されている割合が高く、生活習慣改善への意欲も向上していることが確認された。つまり、早期受診により、糖尿病の治療に限らない多面的な管理につながっていることが示された。

 以上の研究結果より、健診で指摘後の「未治療」を防ぎ、速やかに医療につなげることが、将来の重篤な病気を防ぐために有効である可能性が示唆された。なお、本研究で採用された標的エミュレーションは、臨床試験を可能な限り模倣するべくしてデザインされた研究方法であるが、未測定の交絡因子(因果関係を誤って推定させる潜在要因)などによるバイアスの可能性は否定できないことには留意が必要である。

 研究グループは、「今後は、この科学的根拠に基づき、健診後の受診勧奨の自動化や、未受診者への効果的なアプローチ(ナッジ等の行動経済学的介入)など、受診行動を促すための具体的な社会実装や政策提言につなげていくことが重要である」と述べている。

 本研究は、横浜市立大学大学院データサイエンス研究科ヘルスデータサイエンス専攻 博士課程の鱶口 清満氏(湘南鎌倉総合病院)、同大学院医学研究科 公衆衛生学教授 後藤 温氏、東京大学大学院情報学環/大学院医学系研究科 公共健康医学専攻 准教授 篠崎 智大氏、国立精神・神経医療研究センター 行動医学研究部精神機能研究室室長 成田 瑞氏らの研究グループにより実施され、研究成果は2025年11月23日付で国際糖尿病連合(IDF)の公式学術誌「Diabetes Research and Clinical Practice」にオンライン掲載された。

[ 糖尿病リソースガイド編集部 / 日本医療・健康情報研究所 ]

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