「循環器病対策推進基本計画」を決定 健康寿命の3年延伸と循環器病死亡率の減少を目指す
2020.11.06
政府は10月27日に、今年度から3年間の循環器病対策に関する基本的方向性を示した「循環器病対策推進基本計画」を閣議決定した。
これは「健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法」に基づき策定されたものだ。
(1)循環器病の予防や正しい知識の普及啓発、(2)保健、医療および福祉にかかるサービスの提供体制の充実、(3)循環器病の研究推進の3つを目標としている。
今後はこの基本計画をもとに、「都道府県循環器病対策推進計画」を策定した上で、2040年頃までに「3年以上の健康寿命の延伸および循環器病の年齢調整死亡率の減少」を目指す。
これは「健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法」に基づき策定されたものだ。
(1)循環器病の予防や正しい知識の普及啓発、(2)保健、医療および福祉にかかるサービスの提供体制の充実、(3)循環器病の研究推進の3つを目標としている。
今後はこの基本計画をもとに、「都道府県循環器病対策推進計画」を策定した上で、2040年頃までに「3年以上の健康寿命の延伸および循環器病の年齢調整死亡率の減少」を目指す。
3年以上の健康寿命の延伸および循環器病の死亡率減少を目指す
「健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法」に規定された「循環器病対策推進基本計画」が10月27日に、閣議決定された。 当初は今年夏ごろまでに策定されることになっていたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大により、進行が遅れていた。 基本計画では全体目標として、(1)循環器病の予防や正しい知識の普及啓発、(2)保健、医療および福祉にかかるサービスの提供体制の充実、(3)循環器病の研究推進──の3つの目標を掲げている。 高齢者人口がピークを迎える2040年頃までに、「3年以上の健康寿命の延伸および循環器病の年齢調整死亡率の減少」を目指すとしている。出典:厚生労働省、2020年
循環器病の情報提供と健診の実施率向上で予防を促す
1つめの目標である「循環器病の予防や正しい知識の普及啓発」では、循環器病の発症予防および合併症の発症や症状の進展などの重症化予防に重点を置いた対策を推進する。 循環器病の多くは、運動不足、不適切な食生活、喫煙などの生活習慣や肥満などの健康状態に端を発して発症する。その経過は、▼高血圧、脂質異常症、糖尿病、高尿酸血症、慢性腎臓病などの予備群、▼循環器病をはじめとする生活習慣病の発症、▼重症化・合併症の発症、▼生活機能の低下・要介護状態へと進行するが、患者自身が気付かない間に病気が進行することも多い。 ただし、いずれの段階でも、生活習慣の改善や適切な治療により予防・進行抑制が可能だ。 国民の意識と行動の変容は、生活習慣を改善するために必要なので、国民に対し、循環器病とその多様な後遺症に関する十分かつ的確な情報提供を行うとともに、発症後早期の対応やその必要性に関する知識の普及啓発も行うことで、効果的な循環器病対策を進めるとしている。 生活習慣病の予防と早期発見のために、特定健康診査・特定保健指導などの実施率向上に向けた取組を進め、ナッジ理論などを活用し、実施率向上を目指す。 先進・優良事例の横展開などにより、実施率の向上につながる効果的な方策なども検討する。地域の実情に応じて医療体制を整備
2つめの目標である「保健、医療および福祉に係るサービスの提供体制の充実」では、急性期には発症後早急に適切な診療を開始する必要があるという循環器病の特徴を重視し、地域医療構想の実現に向け、高度急性期および急性期から回復期および慢性期までの病床の機能分化、連携などに取り組み、都道府県が地域の実情に応じた医療提供体制の構築を進める。 現状では、脳梗塞に対するtPA療法(静注血栓溶解療法)や機械的血栓回収療法については、迅速な実施により機能予後の改善が期待できるが、これらの治療法を国民があまねく享受できるようには至ってない。急性大動脈解離や大動脈瘤破裂についても緊急手術が常時可能な施設が限られている。 循環器病患者を救急現場から急性期医療を提供できる医療機関に、迅速かつ適切に搬送可能な体制の構築を進めるため、各都道府県で地域の実情に応じた傷病者の搬送および受入れの実施に関する基準の見直しが継続的に行われるよう促す必要があるとしている。 高度急性期および急性期から回復期および慢性期までの病床の機能分化、連携にも取り組み、訪問診療、訪問看護、訪問薬剤管理指導、訪問リハビリテーションなどを含めた在宅医療の推進、医療従事者の確保など、医療提供体制の構築も進める。かかりつけ医機能を充実させ、多職種連携も整備
「循環器病の研究推進」では、患者のニーズをふまえつつ、産学連携や医工連携もはかりながら、循環器病の病態解明、新たな治療法や診断技術の開発、リハビリテーションなどの予後改善、QOL向上などに資する方法の開発、個人の発症リスク評価や予防法の開発などに関する研究を推進する。 急性期医療の現場における診療情報の活用や診療提供体制の構築、予防(一次予防のみならず、二次予防および三次予防も含む)などの公衆衛生政策などへの診療情報の活用を目的として、国立循環器病研究センターをはじめとした医療機関、関係学会などと連携する。 まずは、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、急性冠症候群、急性大動脈解離および急性心不全(慢性心不全の急性増悪を含む)に係る診療情報を収集・活用する公的な枠組みを構築する。 また、収集された診療情報の二次利用などに関する運用方法や費用負担を含む提供の在り方についても検討を進め、将来的には他の循環器病に広げることも含め検討する。 また、かかりつけ医機能の充実や病診連携の推進、かかりつけ歯科医などによる医科歯科連携や歯科口腔保健の充実、かかりつけ薬剤師・薬局による服薬アドヒアランスの向上のための薬学的管理・指導も進める。 さらに、看護師などによる予防から治療、再発予防、重症化予防までの切れ目のない看護の提供、理学療法士の理学療法、作業療法士の作業療法、言語聴覚士の言語聴覚療法、管理栄養士や栄養士による栄養管理、社会福祉士、介護支援専門員および相談支援専門員による相談・生活支援などに取り組む。 脳卒中患者では、地域の医療機関が連携し、患者の状態を踏まえた適切な医療および介護サービスを継続して提供できるよう、地域連携クリティカルパスを活用することも必要だ。 地域の医療資源を含めた社会資源を効率的に用いて多職種が連携する体制について、その有効性も含めて検討する必要があるとしている。循環器病患者の職場復帰も支援
脳卒中を含む脳血管疾患の治療や経過観察などで通院・入院している患者(約112万人)のうち、約16%が20~64 歳だ。 一般に、脳卒中というと手足の麻痺、言語障害などの大きな障害が残るというイメージがあるが、65歳未満の患者では、約7割がほぼ介助を必要としない状態まで回復するとの報告もある。 また、虚血性心疾患を含む心疾患の患者(約173万人)のうち約16%が20~64 歳だ。 発症直後からのリハビリテーションや適切な治療により、職場復帰(復職)が可能な場合も少なくない。「復職に関して患者の希望がかなえられない事例もあり、障害者就労支援などとの適切な連携が求められる」としている。新型コロナウイルス感染症をふまえた対策も急務
新型コロナウイルス感染症の重症化のリスク因子として、高齢者、基礎疾患(心血管疾患、糖尿病、慢性呼吸器疾患、慢性腎臓病など)が指摘されており、さらに、新型コロナウイルス感染症の合併症として、血栓症を合併する可能性が指摘されている。 このため、生活習慣病の早期発見・早期治療は循環器病の予防に資するのみならず、新型コロナウイルス感染症による重症化の防止にもなりうる。 また、新型コロナウイルス感染症による受診控えが指摘されている中、今後、感染が拡大する局面も見据えて、新型コロナウイルス感染症患者に対する医療を都道府県ごとに確実に確保することを中心としつつ、それ以外の疾患の患者に対する医療の確保も適切に図ることができるような医療提供体制の構築が重要となる。 そのため、新型コロナウイルス感染症に対する医療と、循環器病などのその他の疾患に対する医療を両立して確保することを目指し、適切な医療提供体制の整備を進める。 循環器病対策(厚生労働省)循環器病対策推進協議会(循環器病対策推進協議会)(厚生労働省)
第5回循環器病対策推進協議会資料(厚生労働省 2020年7月16日)
「健康寿命及び地域格差の要因分析と健康増進対策の効果検証に関する研究」(厚生労働科学研究費補助金循環器疾患・糖尿病など生活習慣病対策総合研究事業)
[Terahata / 日本医療・健康情報研究所]