肥満症が医療費に与える影響は大きい 肥満症を減らせば日本の総医療費の増加を抑制できる可能性 日本イーライリリー
肥満に関連する健康障害のある集団で、ベースラインのBMIが25以上の肥満症群では(とくにBMI 27以上では)、総医療費が増大しやすい傾向が示され、肥満症群は非肥満群に比べて、5年間の観察期間での総医療費の経年的増加が有意に大きいことが示された。
肥満に関連する健康障害のある集団での5年後の総医療費増加額の合計のうち、肥満症群の割合は19.5%を占めた。肥満症の人口を減らすことで、総医療費増加の抑制に寄与できる可能性が示されたとしている。

日本人の「肥満症」が医療費に与える影響 初の包括的な研究結果を発表
日本イーライリリーは、肥満に関連する健康障害のある集団(肥満症群)で、肥満と医療費の関係を明らかにすることを目的に、日本人のリアルワールドデータを用いた包括的な研究を実施した。
研究結果から、肥満症群では、肥満度が高いほど(とくにBMI 27以上では)、総医療費が増大することが示された。
さらに肥満症群は非肥満群と比較して、5年間の観察期間での総医療費の経年的増加が有意に大きいという結果になった。
詳細は、5月に佐賀で開催された第61回日本循環器病予防学会学術集会で発表された。
研究は、JMDCの健康保険組合加入者を基盤としたレセプトおよび健康診断データを活用し、2012年1月~2018年12月に、BMIの記録がある成人約24万人(肥満症群 9万3,933人、非肥満群 15万217人)を抽出し、両群での肥満に関連する健康障害の罹患率や医療費の経年的変化を60ヵ月にわたり調査したもの。
主な調査結果は次の通り――。
- 観察期間の総医療費は、肥満に関連する健康障害のある非肥満群と比較して、同肥満症群で高い傾向がみられる。
- 経年的に肥満症群と非肥満群との差が広がる傾向がみられる。
- ガンマ回帰分析を用いてBMI別にみると、BMI≧27kg/m2の群では経年的に総医療費が増大、とくに高度肥満(BMI≧35kg/m2)の群で経年的な総医療費の増大が顕著。
- 肥満に関連する健康障害のある集団での5年後の総医療費増加額の合計のうち、肥満症群での総医療費増加額合計の割合は、全体の19.5%(約2割)を占める。


これまで、肥満によって医療費が増大することは日本でも報告されていたが、肥満に関連する健康障害をもつ集団を対象にした日本の医療費での包括的な研究報告はなかった。
研究著者であり、生活習慣病予防研究の第一人者であり生活習慣病予防研究センターの設立者である岡山明医師は、次のように述べている。
肥満症は、これまで治療の選択肢が限られていたことや、社会的スティグマの存在もあり、他の慢性疾患と同じレベルの必要な治療が必ずしも充分にはなされてきませんでした。
そのなかで今回、肥満症の人口を減らすことが医療費増加の抑制に寄与できる可能性が示唆されました。肥満症のケアが当事者自身のQOLの改善のみならず、社会経済へもベネフィットをもたらす可能性が示唆されたことは意義深いことです。
調査概要
調査名 | JMDCデータベースを用いた日本人の肥満症に起因する医療費の検討 |
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調査対象 | 肥満症群:9万3,933人、非肥満群:15万217人 対象
肥満症群 :Index時BMI≧25kg/m2+ベースライン期間中に肥満に関連する健康障害あり
主な組み入れ基準
非肥満群:Index時BMI<25kg/m2+ベースライン期間中に肥満に関連する健康障害あり
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調査期間 | 72ヵ月(うち観察期間は60ヵ月) |
調査項目 | 肥満症群・非肥満群の5年間における経年変化を下記4項目で調査した。
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調査方法 | JMDC社のデータベースより、2012年1月~2018年12月にBMI(body mass index)の記録がある加入者を抽出した。初めて記録されたBMIに基づき18歳以上で肥満関連疾患がある肥満(BMI≧25 kg/m2:9万3,933例)および非肥満(BMI<25 kg/m2:15万217例)の2コホートを定義し、両群での肥満関連疾患の有無および医療費について検討した。各年の総医療費を目的変数、ベースラインのBMI、ベースラインからの経過年、ベースラインのBMI×ベースラインからの経過年、年齢、性別、ベースラインの外来受診頻度を説明変数とするガンマ回帰分析に基づき、各年の総医療費と説明変数の関係を分析した。 |
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