2型糖尿病と高血圧の合併は死亡リスクを大幅に上昇 糖尿病のみと比べて心血管疾患死亡リスクは2倍以上

2025.06.05
 2型糖尿病と高血圧の合併は、どちらか一方(2型糖尿病のみ、あるいは高血圧のみ)の場合と比較して、死亡リスクを大幅に上昇させることが、4万8,727人の米国成人を対象とした調査で明らかになった。

 高血圧と2型糖尿病を合併している場合は、どちらもない場合と比較して、全死因死亡リスクが2.46倍に、心血管疾患死亡リスクが2.97倍にそれぞれ上昇することが明らかになった。

 2型糖尿病と高血圧の合併は、糖尿病のみの場合と比較して、全死因死亡リスクを25%、心血管疾患死亡リスクを2倍以上に上昇させることなども分かった。

 前糖尿病と高血圧の両方を有する場合も、死亡リスクは19%高くなることが示された。

糖尿病と高血圧の合併は2倍に増加 4万8727人を調査

 2型糖尿病と高血圧が合併した成人患者は、どちらか一方のみ、あるいはどちらもない人と比較して、全死因死亡リスクおよび心血管疾患死亡リスクが有意に高いことが、4万8,727人の米国成人を対象とした、米コロンビア大学公衆衛生大学院、アルバート アインシュタイン医科大学、カリフォルニア大学などの調査で明らかになった。

 また、2型糖尿病と高血圧の進展に先立つリスク因子である前糖尿病(prediabetes)の段階でも、糖尿病と高血圧の合併は死亡リスクの上昇につながることも示された。

 研究は、コロンビア大学公衆衛生大学院の疫学助教授であり、慢性疾患ユニットの共同リーダーである、Nour Makarem氏らによるもの。研究成果は、米国糖尿病学会(ADA)の「Diabetes Care」に掲載された。

 「高血圧は、米国成人のほぼ半数が悩まされており、その有病率は2050年までに61%に増加すると予測されている。2型糖尿病についても、米国成人の約15%が悩まされており、3分の1以上は前糖尿病の状態にある。適切な介入をしないと、前糖尿病の人の半数以上が糖尿病を発症するという予測がある」と、Makarem氏は言う。

 「重要なのは、米国成人で2型糖尿病と高血圧を合併した人口が増加しており、心血管疾患と死亡リスクが高まっていることだ。これらの疾患を効果的に予防・管理し、その悪影響を逆転させるための公衆衛生戦略が緊急に必要とされている」としている。

高血圧と糖尿病の合併は心血管疾患死亡リスクを3倍に上昇

 研究グループは今回、1999~2018年の米国国民健康栄養調査(NHANES)に参加した4万8,727人の成人のデータを解析した。参加者を、「高血圧および2型糖尿病の合併なし」「高血圧のみ」「2型糖尿病のみ」「両方が合併」の4つのグループに分類した。

 参加者の50.5%は2型糖尿病も高血圧も発症しておらず、38.4%は高血圧のみか2型糖尿病のみで、8.7%は両方を合併していた。中央値9.2年の追跡期間中に7,734人の死亡が確認された。なお、米国人口での高血圧と2型糖尿病の合併による負担は、1999~2018年に6%から12%に増加した。

 解析した結果、高血圧と2型糖尿病の合併は、高血圧も2型糖尿病もない状態と比較して、全死因死亡リスクの上昇[ハザード比(HR) 2.46、95%信頼区間 2.45~2.47]、心血管疾患死亡リスクの上昇[HR 2.97、同 2.94~3.00]を予測することが示された。

 2型糖尿病と高血圧の合併は、高血圧のみの場合と比較して、全死因死亡リスクを66%、心血管疾患死亡リスクを54%それぞれ上昇させることや、2型糖尿病と高血圧の合併は、糖尿病のみの場合と比較して、全死因死亡リスクを25%、心血管疾患死亡リスクを2倍以上に上昇させることなども分かった。

 この関連は、女性の方が男性よりも強く示され[交互作用P値<0.01]、高血圧と2型糖尿病の両方を有する場合は、高血圧あるいは2型糖尿病のいずれか一方を有する場合と比較して、全死亡リスクおよび心血管疾患による死亡リスクはそれぞれ最大66%、2倍以上高くなることが示された。

 さらにこの関連は、参照群(2型糖尿病のみ、あるいは高血圧のみ)に応じて、性別、人種、民族によって異なることが示された[交互作用P値<0.01]。前糖尿病と高血圧の両方を有する場合、どちらもない場合、あるいはどちらか一方のみを有する場合と比較して、死亡リスクは19%高くなることも予測された。

 研究では、高血圧と2型糖尿病の合併は、高齢者、低所得者、低教育水準の人々に多くみられ、非ヒスパニック系黒人およびヒスパニック系成人では、非ヒスパニック系白人成人と比較して、不均衡に多くみられることも示された。

糖尿病患者の3分の2が高血圧も合併

 「米国の成人での2型糖尿病と高血圧の合併による負担は増加しており、死亡リスクの大幅な上昇と関連していることが明らかになった。さらに、2型糖尿病や高血圧に進行する前糖尿病の段階で、死亡リスクの上昇がはじまることも示された」と、Makarem氏は言う。

 「本研究の強みのひとつは、20年にわたる全国規模の代表的データを使用していることだ。注目すべき発見は、2型糖尿病と高血圧の合併による負担が研究期間中にほぼ倍増したことだ。全体として、糖尿病患者の約3分の2が高血圧も合併しており、高血圧の成人患者の約4分の1が糖尿病も合併していた」としている。

 これらの結果は、とくに心血管代謝疾患の罹患率が高い地域で、血糖値と血圧の定期的なスクリーニングを行うことが重要であることを浮き彫りにしている。研究者らは、患者の服薬アドヒアランスの向上やエビデンスにもとた生活習慣介入の導入など、予防対策に加え、統合的な管理戦略への投資を行うことを提唱している。

 「米国の人口の高齢化と慢性疾患の増加予測を考慮すると、研究結果は、複数の心血管代謝疾患に同時に対処し、慢性疾患の予防と健康寿命の延長を優先する革新的な公衆衛生上の介入と政策の緊急の必要性を強調している」としている。

Burden of Coexisting Hypertension and Type 2 Diabetes in U.S. Adults is Increasing (コロンビア大学公衆衛生大学院 2025年5月28日)
Associations of Concurrent Hypertension and Type 2 Diabetes With Mortality Outcomes: A Prospective Study of U.S. Adults (Diabetes Care 2025年5月21日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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