SGLT2阻害薬「ジャディアンス」が心血管死または心不全による入院のリスク低下を達成
2020.08.07
SGLT2阻害薬「ジャディアンス」(一般名:エンパグリフロジン)が、2型糖尿病合併の有無を問わない心不全患者対象の第3相試験で、主要評価項目である心血管死または心不全による入院のリスク低下を達成したと発表された。
左室駆出率が低下している心不全患者対象のEMPEROR-Reduced試験
ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、2型糖尿病合併の有無を問わない左室駆出率が低下した心不全患者を対象とした第3相試験「EMPEROR-Reduced」試験の主要評価項目が達成されたと発表した。 「EMPEROR」(慢性心不全の患者を対象にしたジャディアンスのアウトカム試験)の臨床試験プログラムは、現在心不全の標準治療を受けている2型糖尿病合併または非合併の左室駆出率が保持された慢性心不全(HFpEF)患者または左室駆出率が低下した慢性心不全(HFrEF)患者を対象に、ジャディアンスの1日1回投与による治療をプラセボと比較検討する以下の2つの第3相無作為化二重盲検試験で構成される。 心不全は糖尿病患者で多くみられるが、心不全患者全体の約半分は糖尿病に罹患していない。ジャディアンスの心不全の臨床試験プログラムは、標準治療にジャディアンス(10mgまたは25mg、1日1回投与)を上乗せしたときの効果を、標準治療にプラセボを上乗せした群と比較して評価した「EMPA-REG OUTCOME」試験のデータにもとづいて開始された。 「EMPEROR-Reduced」試験では、左室駆出率が低下した慢性心不全(HFrEF)患者でのジャディアンスの安全性と有効性を評価する。主要評価項目は、判定心血管死または判定HHF(心不全による入院)の最初の事象までの時間。患者数は3,730人で、2020年に完了した。 「EMPEROR-Preserved」試験では、左室駆出率が保持された慢性心不全(HFpEF)患者でのジャディアンスの安全性と有効性を評価する。主要評価項目は、判定心血管死または判定HHF(心不全による入院)の最初の事象までの時間(最大38ヵ月)。予定患者数は約5,990人で、2021年に完了する予定。 左室駆出率は、左心室が収縮するごとに送り出される血液量のパーセンテージの値。心臓が弛緩すると心室に血液が満たされる。HFrEFになるのは心筋が効果的に収縮しておらず、心臓が正常に機能している場合と比較して身体に送り出される血液が少ないとき。また、HFpEFになるのは、心筋が正常に収縮するが、心室に十分な血液が満たされていないとき。心臓が正常に機能しているときと比較して、心臓に流れ込む血液が少なくなる。 「EMPEROR-Reduced」では、標準治療にエンパグリフロジン(10mg)を上乗せすることで、心血管死または心不全による入院のリスクがプラセボに比べて有意に低下し、主要評価項目を達成した。同試験における安全性プロファイルは、ジャディアンスのこれまでの安全性プロファイルと同様だった。 「EMPEROR-Reduced試験の結果は、ジャディアンスが心不全の新たな標準治療となり、既存治療に対してジャディアンスを加えることで、さらなる有効性をもたらす可能性を示唆しています」と、ベイラー大学医療センターの心血管科学研究者であり、EMPERORプログラム実行委員会委員長を務めたMilton Packer氏述べている。 同試験の詳細な結果は、2020年8月29日の欧州心臓病学会(ESC)のホットラインセッションで発表される。また、心不全に対する2つ目の第3相試験である「EMPEROR-Preserved」試験の結果は2021年に発表される予定。 「心臓・腎臓・代謝疾患は、入院や死亡を含めて重篤な結果をもたらします。私たちは、EMPOWER臨床試験プログラムを通じて、これら重篤な臨床的アウトカムに関する知識を進歩させます。ジャディアンスがこれらの疾患を持つ世界中の患者さんにどのように貢献できるかを模索していきます」と、イーライリリー・アンド・カンパニーでは述べている。 なお、日本でのジャディアンス錠の効能・効果は2型糖尿病であり、心血管イベントおよび腎臓病のリスク減少に関連する効能・効果、慢性心不全の適応は取得していない。 ベーリンガーインゲルハイムジャパン日本イーライリリー
[Terahata / 日本医療・健康情報研究所]