ステロイド薬「デキサメタゾン」が国内2例目の正式なコロナ治療薬に 厚労省「COVID-19 診療の手引き」に追加

2020.07.29
 厚生労働省は7月21日に、「新型コロナウイルス感染症COVID-19 診療の手引き 第2.2版」を公開し、ステロイド薬の「デキサメタゾン」を、日本国内で承認されている医薬品として追加した。5月に特例で承認した抗ウイルス薬「レムデシビル」に続き、国内で2例目の正式なコロナ治療薬となった。

デキサメタゾンがCOVID-19重症例に有効

 「デキサメタゾン」は、合成副腎皮質ホルモン剤(ステロイド)で、抗炎症作用、抗アレルギー作用、免疫抑制作用など、広範囲にわたる作用がある。1960年代から使用されており、後発薬もあり低価格で手に入りやすい。

 手引きでは、同剤について英オックスフォード大学や英国立衛生研究所(NIHR)などが主導した非盲検ランダム化比較試験「RECOVERY」の結果を紹介している。

 「New England Journal of Medicine (NEJM)」に7月17日に掲載された論文によると、新型ウイルス感染症が重症化し呼吸補助が必要になった患者に対するデキサメタゾン投与により、死亡リスクが低下した。

 「RECOVERY」では、デキサメタゾン1日1回6mg(経口または静脈内注射)で最大10日間投与したデキサメタゾン群2,104例(平均年齢 66.9±15.4歳)と、標準治療群4,321例(平均年齢 65.8±15.8歳)にランダムに割り付けて、治療効果を比較した。

 主要評価項目である、治療開始28日後の全死亡率は、デキサメタゾン群22.9%(482例)、標準治療群25.7%(1,110例)で、死亡率を有意に低下させた(年齢調整率リスク比(RR): 0.83、95%CI: 0.75-0.93、P<0.001)。

 さらに、人工呼吸器を装着している患者の死亡率は29.3%対41.4%(RR: 0.64、95%CI: 0.51-0.81)、酸素投与のみを受けている患者の死亡率は23.3%対26.2%(RR: 0.82、95%CI: 0.72-0.94)となり、いずれもデキサメタゾン群で有意に低下した。

 一方で、酸素投与の必要のない患者では、患者の死亡率は17.8%対14.0%となり、有意差は認められなかった(RR: 1.19、95%CI: 0.91-1.55)。

 副次評価項目として、デキサメタゾン群は標準治療群より入院期間が短く(平均入院日数:12日対13日)、28日以内の退院の可能性が高かった(RR: 1.10、95%CI: 1.03-1.17)。この最大因子は侵襲的人工呼吸器管理だった。

 「デキサメタゾンが、酸素治療を必要とする重症患者の生存率を高める利益は大きく、COVID-19における標準治療になる可能性がある。呼吸補助の必要がない患者に対する効果は確認されなかったものの、同薬は安価ですでに幅広く利用されているのは素晴らしい」と、RECOVERY主席調査委員であるオックスフォード大学のMartin Landray氏は述べている。

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