SGLT2阻害薬「ジャディアンス」がDPP-4阻害薬に比べ2型糖尿病患者の心不全による入院、末期腎不全および全死亡リスクを低下
2020.01.08
日本ベーリンガーインゲルハイムと日本イーライリリーは、東アジア3ヵ国(日本、韓国、台湾)におけるリアルワールド研究である「EMPRISE」研究の中間解析を発表した。日常診療において、SGLT2阻害薬「ジャディアンス(一般名:エンパグリフロジン)」は、DPP-4阻害薬と比較して、心不全による入院、末期腎不全および全死亡のリスク低下と相関した。
「EMPRISE研究」は日本・韓国・台湾の5.7万人が対象
「EMPRISE(ジャディアンスの有効性および安全性の比較)」研究は、アジア、欧州、米国のさまざまな心血管リスクを有する2型糖尿病患者の日常診療において、ジャディアンスの心血管に対する有効性、安全性、医療資源利用、医療費をDPP-4阻害薬と比較して評価することで、「EMPA-REG OUTCOME」試験結果を補完することを目的に実施された非介入研究。 東アジアでは、日本のMedical data vision database(研究期間:2014年12月~2018年4月)、韓国のNational Health Insurance Service database(同2016年5月~2017年12月)および台湾のNationalHealth Insurance database(同2016年5月~2017年12月)からデータを取得した。 今回の研究は韓国・釜山で開催された国際糖尿病連合(IDF)Congress 2019で公表されたもので、清野裕氏(関西電力病院総長/関西電力医学研究所所長)を中心に、矢部大介氏(関西電力医学研究所副所長/岐阜大学教授)、および韓国と台湾のエキスパートの指導の下、日本、韓国、台湾の約5万7,000人の成人2型糖尿病患者対象としたリアルワールドデータを解析したもの。 その結果、ジャディアンスは、DPP-4阻害薬と比較して、2型糖尿病患者の心不全による入院リスクを18%低下、末期腎不全リスクを63%低下、全死亡リスクを36%低下と相関していた。また、これらの結果は心血管疾患既往の有無にかかわらず一貫していることが明らかになった。 「医薬品の有効性には民族差がある可能性があります。東アジア3ヵ国の日常診療データを用いた本研究で、心血管の既往の有無に関わらず、エンパグリフロジンが心不全による入院リスク、末期腎不全リスク、そして全死亡リスク低下と相関する結果が得られたことは、東アジアの糖尿病治療において非常に有用な結果です」と、研究を主導した清野裕氏は述べている。 「EMPA-REG OUTCOME」試験では、心血管疾患既往の2型糖尿病患者において、ジャディアンスを標準治療に上乗せすることにより、心不全による入院リスクが35%、全死亡リスクが32%、腎症の初回発現または悪化のリスクが39%低下することが示されており、今回の研究結果は同試験の結果を補完するものとなっている。 「EMPRISE US」研究では、米国でジャディアンス使用開始からの5年間の使用について評価している。米国ボストンのブリガム・アンド・ウィメンズ病院の薬剤疫学部門とハーバード大学医学部の共同研究者によって主導されており、20万人以上の2型糖尿病患者の医療記録を分析する予定。 なお、日本におけるジャディアンス錠の効能・効果は2型糖尿病であり、心血管イベントのリスク減少、慢性心不全、慢性腎臓病に関連する効能・効果は取得していない。 ジャディアンス錠10mg/ジャディアンス錠25mg 添付文書(医薬品医療機器総合機構)関連情報
[Terahata / 日本医療・健康情報研究所]