認知症の原因は酸化ストレス 新開発の抗酸化サプリメントで認知症を予防 岡山大が臨床試験で実証
2019.11.13
酸化ストレスが認知症の原因として重要な因子であり、抗酸化作用のあるサプリメントにより認知症を予防できるという研究を、岡山大学が発表した。
酸化ストレスを抑えることで認知症を予防できる
認知症は日本で急速に増加しており、厚労省の新オレンジプランによると、2025年には有病者数は700万人になると推定されている。しかし、アルツハイマー型認知症に有効な新薬は2011年7月以降登場しておらず、認知症の新薬の開発が喫緊の課題となっている。 その中で、岡山大学の研究チームが、酸化ストレスが認知症の原因として重要な因子であり、抗酸化作用のあるサプリメントにより認知症を予防できる可能性があることを世界ではじめて明らかにした。 「軽度認知障害(MCI)」とは、今後認知症になる可能性の高い認知症の前段階のこと。現在の医療ではMCIの段階では、薬剤を投与することはできない。薬による治療を開始できるようになるのは、時間の経過により進行して認知症と診断されたときだ。 既存の認知症の治療薬は副作用が多く、進行を確実に止めるられものではない。しかし、MCIの段階から抗酸化配合剤を服用すれば、酸化ストレスを抑えることで認知症の予防ができる可能性があることがはじめて明らかになった。認知症を予防する効果があるサプリメント
研究で使用した抗酸化配合剤「Twendee X(トゥエンディX)」は、安全性試験が実施されているサプリメントで、岐阜大学科学研究基盤センター抗酸化研究分野の犬房春彦特任教授によって研究開発された。 この研究により「Twendee X」は、認知症予防学会エビデンス創出委員会により、6段階ある認定グレードでA判定「認知症を予防する効果がある」を受けた。 アミロイドβは、アルツハイマー病患者の脳の老人斑に沈着するペプチド。また、タウタンパク質は、神経細胞で凝集・線維化するタンパク質。認知症の要因は、アミロイドβやタウタンパク質の異常だが、研究グループは今回の研究で、これに加え、脳の酸化ストレスが重要であることを世界ではじめて臨床試験で実証した。日本人の軽度認知障害患者を対象に臨床研究を実施
岡山大学脳神経内科などの研究グループは、抗酸化配合剤「Twendee X」の抗酸化作用を調べるために、動物実験を行った。 このサプリメントを高齢のマウスに29週間投与した結果、56週齢時の何も投与していないマウスの脳では、新生神経細胞数(Tuj1陽性細胞)が6週齢の若年マウスと比較して65%程度に減少するのに対し、サプリメントを与えたマウスでは6週齢マウスと同等であり、さらに同週齢のマウスと有意差をもって増加することを明らかにした。 マウス急性脳梗塞モデルにサプリメントを、梗塞前14日間+梗塞後5日間投与した群では、梗塞体積が3分の2に縮小したことがが確認された。酸化ストレスマーカー、炎症性マーカーも有意に減少しており、脳梗塞では酸化ストレスと炎症を抑えることで脳神経保護作用を得られることを確かめた。 アルツハイマーモデルマウスにサプリメントを投与した群では、脳における神経の密度の低下を有意に抑制し、老人斑の沈着も減少したことも確認した。 研究グループは、これらの基礎実験の結果をもとに、ヒトへの臨床研究を開始した。日本人のMCIの患者を対象に、前向き・ランダム化二重盲検、プラセボ・コントロール試験を実施した。 「Twendee X」かプラセボか分からない状態にして6ヵ月間投与した後、MMSEと長谷川式スケール(HDS-R)で測定。その結果、このサプリメントを服用した群で、MMSE、HDS-Rの両方で、有意に改善した。酸化ストレスを抑えることでヒトの認知症を予防ができることを確認した。今後は糖尿病やがんなど酸化ストレスの関わる疾患にも拡大
このように、認知症の前段階であるMCI患者で、「Twendee X」は認知症の進行を抑制することが証明された。このサプリメントは医薬品に要求される安全性試験が行れており、副作用なく認知症の診断前からの投与が可能だという。今後は認知症と診断された患者に対しての臨床研究を予定しているという。 酸化ストレスについては、認知症だけでなく、糖尿病、がん、潰瘍性大腸炎などの炎症性疾患、動脈硬化、肝炎・肝硬変、アレルギー性疾患、睡眠時無呼吸症候群、骨粗鬆症などの病因であることから、これらの疾患でも臨床研究を広げていく予定だ。 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 脳神経内科学岐阜大学研究推進・社会連携機構科学研究基盤センター 抗酸化研究部門
日本認知症予防学会
TwendeeX(トゥインディX)(SUPALIV)
Clinical Benefits of Antioxidative Supplement Twendee X for Mild Cognitive Impairment: A Multifigure, Randomized, Double-Blind, and Placebo-Controlled Prospective Interventional Study(Journal of Alzheimer's Disease 2019年8月24日)
[Terahata / 日本医療・健康情報研究所]