SGLT2阻害薬「フォシーガ」が米国で2型糖尿病患者の心不全による入院リスク低減の承認を取得
2019.10.31
アストラゼネカは10月21日、米国食品医薬品局(FDA)より、SGLT2阻害薬「フォシーガ」(一般名:ダパグリフロジン)の心血管疾患の既往歴または複数の心血管リスク因子を有する成人2型糖尿病患者の心不全による入院リスク低減の承認を取得したと発表した。
心不全による入院リスクを低減する機会を提供
同剤は、複数の心血管リスク因子または心血管疾患の既往歴を有する2型糖尿病患者の心不全による入院リスクの低減を適応として、米国で承認された最初のSGLT2阻害薬となった。 この承認は、「DECLARE-TIMI58」試験の結果にもとづく。同試験は、複数の心血管リスク因子または心血管疾患の既往歴を有する2型糖尿病患者を対象としたSGLT2阻害薬の心血管アウトカム試験(CVOT)。 同試験は、広範な患者集団を対象とした、第3相無作為化二重盲検プラセボ対照多施設共同試験で、複数の心血管リスク因子、あるいは、心血管疾患の既往歴を有する患者を含む、心血管イベントリスクが高い成人2型糖尿病患者を対象に、フォシーガの有効性と安全性をプラセボと比較評価した。 日本を含む世界33ヵ国882施設から1万7,000例超の患者が登録され、TIMI試験グループ(米・マサチューセッツ州ボストン)がHadassah Hebrew大学メディカルセンター(イスラエル・エルサレム)と協力し、独立して実施された。 その結果、フォシーガはプラセボと比較して、心不全による入院または心血管死の主要な複合評価項目のリスクを有意に17%低下させた(4.9% vs. 5.8% ハザード比0.83 [95% 信頼性区間0.73-0.95] p=0.005)。 この結果は心不全による入院における27%の有意なリスク減少(2.5% vs. 3.3% ハザード比0.73 [95% 信頼性区間0.61-0.88])にもとづいている。治療ベネフィットはすべての患者サブグループにおいて一貫していた。 FDAは、フォシーガの第3相DAPA-HF試験およびDELIVER試験にとづき、左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)または左室駆出率が保持された心不全(HFpEF)の成人患者における心血管死または心不全悪化のリスク低減を目的とした開発に対し、ファストトラック指定を付与した。 また、第3相DAPA-CKD試験に基づき、慢性腎臓病(CKD)患者における腎不全の進行遅延、心血管死ならびに腎死の予防を目的とした開発に対し、ファストトラック指定を付与した。 同試験の共同治験統括医およびThrombolysis in Myocardial Infarction(TIMI)試験グループの主任研究員を務める、ブリガム・アンド・ウィメンズ病院およびハーバード大学医学部のStephen Wiviott氏は、「DECLARE試験は、ダパグリフロジンが複数の心血管リスク因子または心血管疾患の既往歴を有する2型糖尿病患者の心不全リスクを低減することが可能であることをはっきりと証明した重要な試験。これらのデータは、多様な患者集団の心不全リスクに対応するために、私達の糖尿病管理を、血糖コントロールを第一としたものから血糖コントロールを超えたものへと変える可能性がある」と述べている。 この承認は2019年8月に発表したEUにおける販売承認内容への追加に続くもの。また、同適応の追加は中国においても承認審査中であり、規制当局の判断は2020年の上半期に得られる予定。なお、2型糖尿病患者の心不全による入院リスク低減の適応は日本では未承認だ。[Terahata / 日本医療・健康情報研究所]