慶應義塾大学とアストラゼネカが循環器・腎・代謝疾患領域におけるリアルワールドエビデンスの創出を目指す共同研究を開始

2019.10.11
 慶應義塾大学とアストラゼネカは、行政系医療保健データを活用した循環器・腎・代謝疾患領域におけるリアルワールドエビデンス(RWE)の創出を目的とした共同研究契約を締結し、産学連携により地域特性に応じた効果的な保健医療施策への貢献を目指すと発表した。

産学連携で地域特性に応じた保健医療施策への貢献を目指す

 共同研究は、慶應義塾大学が主導する、人々を中心とした情報基盤"PeOPLe2"の活用によってライフイノベーションの創出を目指すプロジェクトのひとつ。このプロジェクトは、科学技術振興機構の産学共創プラットフォーム共同研究推進プログラム(OPERA)の事業に採択されている。

 両者は共同研究により、介護も含めた多様なレセプト(診療報酬明細書)などの行政系医療保健データベースを正確に取得する基盤技術の開発と高度化、ならびに循環器・腎・代謝疾患領域における疫学および疾病負担の理解や予防、医療資源配分の改善の観点からの利活用を検討する。

 高齢化が進む日本では、罹患者数の増加にともない、すでに国民の死亡原因の上位にある循環器病による死亡者数は、今後さらに増加することが予想されている。循環器病が重大な問題となっている現状を鑑み、循環器疾患予防による国民の健康寿命の延伸と医療および介護にかかる負担の軽減を目的とした「脳卒中・循環器病対策基本法」が2018年12月に成立された。

 心不全をはじめとする循環器疾患によって患者の身体的、経済的、社会的負担が増大している一方で、それらを総合的に分析した地域ごとの研究例は少なく、疾患の予防、早期発見・早期治療に向けた地方自治体による効果的な対策が難しい現状がある。

 超高齢社会であると同時に、少子化・人口減少が進行する日本社会で、持続可能な社会システムを見出すことが喫緊の課題となっている。こうした状況では、疾病が進行してから高度な治療を届けるというだけではなく、より早期の段階で診断・治療することや、人々の健康を高めて疾病の発生率を減少させることが重要になる。

 「日本には健康診断をはじめ、健康な段階からのデータが豊富にあります。PeOPLe構想の中でさまざまなデータを連結することにより、効果的な予防や早期治療の手がかりを得ることができるでしょう。また、アストラゼネカがグローバルに取り組んでいるリアルワールドデータ活用の知見は、日本の現状と課題を把握する上でも有用です」と、同大学医学部医療政策・管理学教室の宮田裕章教授は述べている。

 「アストラゼネカでは、循環器・腎・代謝領域を注力領域のひとつとして、相互に関連する循環器・腎・代謝疾患における幅広い患者のデータを構築する臨床試験およびリアルワールド研究を世界規模で実施しています。また、日本でも、日本の患者のリアルワールドデータを駆使した臨床・疫学研究を多数実施しており、患者中心の包括的なアプローチによる疾患管理を目指しています」と、同社執行役員メディカル本部長の松尾恭司氏は述べている。

慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室

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