SGLT2阻害薬「フォシーガ」のDECLARE試験の結果 2型糖尿病における心不全による入院または心血管死のリスクが低下
2018.11.16
アストラゼネカは、SGLT2阻害薬「フォシーガ」(一般名:ダパグリフロジン)の大規模な心血管アウトカム試験である「DECLARE」試験の全試験結果を発表した。フォシーガが、2型糖尿病患者における心不全による入院または心血管死のリスクを低下させることが示された。
詳細は、シカゴで開催された米国心臓協会(AHA)学術集会2018で発表されたほか、「New England Journal of Medicine」に掲載された。
詳細は、シカゴで開催された米国心臓協会(AHA)学術集会2018で発表されたほか、「New England Journal of Medicine」に掲載された。
心不全による入院または心血管死の複合評価で17%のリスク減少
「DECLARE」試験は、世界33ヵ国の1万7,000名超の患者を対象にした、SGLT2阻害薬の心血管アウトカム試験。主要評価項目の1つである心不全による入院または心血管死の複合評価では、フォシーガ群はプラセボ群に対して、有意に17%のリスクを減少した(4.9% vs. 5.8%; HR 0.83、95%CI 0.73-0.95、p=0.005)。心不全による入院または心血管死の減少は、心血管リスクを有する患者群ならびに心血管疾患の既往歴のある患者群を含むすべての患者群において一貫して認められた。 もう1つの主要評価項目である主要心血管イベント(MACE)は、フォシーガ群で発現頻度は少なかったものの、統計学的な有意差は認められなかった(8.8% vs. 9.4%; HR 0.93、95%CI 0.84-1.03、p=0.17)。 「DECLARE」試験の安全性の主要評価項目である、心血管死、心筋梗塞または虚血性脳卒中を含む複合評価項目のMACEにおいて、フォシーガ群はプラセボ群と比較してリスクを増加させず、プラセボ群に対する非劣性を示し、これまでに確立されたフォシーガの安全性プロファイルと一貫した結果が確認された。 さらに、次の安全性の評価項目の発現頻度は、フォシーガ群とプラセボ群の間に差異は認められなかった。(手足の一部)切断(1.4% vs. 1.3%)、骨折(5.3% vs. 5.1%)、膀胱がん(0.3% vs. 0.5%)、壊疽性筋膜炎(フルニエ壊疽)(1例 vs. 5例)という結果になった。また、糖尿病性ケトアシドーシス(0.3% vs. 0.1%)および性器感染(0.9% vs. 0.1%)の発現頻度はいずれもわずかだった。 「2型糖尿病患者は、心筋梗塞や虚血性脳卒中の高い発症リスクとともに、健康な人の2~5倍の心不全発症リスクを抱えている。心不全は、診断から5年後の生存率が50%であり、今回の試験結果は血糖コントロールにとどまらないより広い理解をもつという意味で大変重要だ」と、アストラゼネカのElisabeth Björk氏は言う。 副次的評価項目は名目上の有意差ではあるが、腎の複合評価項目においては、対象となった広範な患者においてフォシーガ群はプラセボ群に対して、腎症の新規発症率または悪化率を24%減少した(4.3% vs. 5.6%; HR 0.76、95%CI 0.67-0.87)。また、全死亡はフォシーガ群においてより低い頻度だった(6.2% vs. 6.6%; HR 0.93、95%CI 0.82-1.04)。 なお、日本ではフォシーガの心血管イベント、心血管死、心不全の抑制、もしくは慢性腎臓病治療薬としての適応はない。 Dapagliflozin and Cardiovascular Outcomes in Type 2 Diabetes(New England Journal of Medicine 2018年11月10日)フォシーガ(アストラゼネカ)
[Terahata / 日本医療・健康情報研究所]