肥満症治療薬「BELVIQ」の1.2万人規模の心血管疾患アウトカム試験 心血管イベントを増やさないで体重を減少
2018.07.19
エーザイは、肥満症治療薬「ロルカセリン hydrochloride」(一般名:BELVIQ、米国製品名)について、患者1万2,000人を対象に実施した心血管疾患アウトカム試験「CAMELLIA-TIMI 61」のトップライン結果を発表した。
心血管イベントのリスクが増加しないことを確認
「BELVIQ」は米国で、成人患者の体重管理を目的とした食事療法と運動療法に対する補助療法として、2012年6月にFDAより承認され、2013年6月に発売された。 同試験は、「BELVIQ」の安全性評価を主要目的とした市販後臨床試験。TIMI(Thrombolysis in Myocardial Infarction) Study Groupとの提携のもと、米国を含む8ヵ国、400施設以上で実施された、肥満症治療に関する最大規模の心血管疾患アウトカム試験。 過体重および肥満の成人患者で、心血管疾患をすでに有している、もしくは心血管疾患のリスク因子を伴う2型糖尿病を有する患者を対象に、「BELVIQ」10mg錠1錠を1日2回長期投与し、主要心血管イベント(MACE、心血管死、心筋梗塞、脳卒中)の発生頻度を評価した。 その結果、「BELVIQ」の長期投与群は、プラセボ投与群と比較してMACEの発生頻度を増加せず、主要安全性評価目的を達成したことが確認された。「BELVIQ」は、体重管理を目的とする治療薬として、長期にわたる心血管疾患アウトカム試験において安全性目的を達成した、最初の薬剤となった。 「入院を要する不安定狭心症もしくは心不全、または冠血行再建術」をMACEに加えたMACE+の発生頻度についても主要有効性評価目的として評価した。「BELVIQ」投与群におけるMACE+の発生頻度は、プラセボ投与群と比較して統計学的優越性は示さなかったが、非劣性が確認された。複数の心血管リスク因子(血圧、脂質、血糖、腎機能)を軽減
2型糖尿病への移行も抑制
一方、複数の心血管リスク因子に対する「BELVIQ」の効果についても評価したところ、「BELVIQ」群は血圧、脂質、血糖、腎機能に関する値について有意な改善を示すとともに、2型糖尿病を発症していない患者における2型糖尿病への移行の抑制も確認された。さらに、「BELVIQ」群は、2型糖尿病および閉塞性睡眠時無呼吸症を有する部分集団において、プラセボ群と比較して長期的な体重減少を示した。
なお、同試験を通して確認された「BELVIQ」の安全性プロファイルは、承認取得時と同様であり、もっとも多く報告されている有害事象は、めまい、尿路感染症および疲労だった。
「肥満症は世界的にも大きな問題であり、心臓病や高血圧、2型糖尿病、閉塞性睡眠時無呼吸症など深刻な疾患の発症リスクと関連があります。この強固なグローバル試験の結果は、医療従事者や特に心血管疾患や肥満症に伴う合併症を有する患者に重要な情報をもたらし、新たな治療の選択肢につながると考えています」と、エーザイ・ニューロロジービジネスグループのLynn Kramer氏述べている。
同試験の詳細な解析結果については、2018年8月にドイツ、ミュンヘンで開催される欧州心臓病学会(ESC Congress 2018)で、10月にドイツ、ベルリンで開催される欧州糖尿病学会(EASD 2018)で発表される予定。
脳内のセロトニン2C受容体を刺激し摂食を抑制
「BELVIQ」は米国のArena Pharmaceuticalsが創製した新規化合物で、選択的に脳内のセロトニン2C受容体を刺激することにより摂食を抑制し、満腹感を促進する。同剤は、米国でBMIが30以上、あるいは少なくとも1つ以上の体重に関連する合併症を有するBMIが27以上の成人患者の体重管理を目的とした食事療法と運動療法に対する補助療法として、2012年6月にFDAより承認された。 「BELVIQ」は2015年から韓国で販売されており、2016年7月にメキシコで、12月にブラジルで、肥満症に係る適応の承認を取得している。2016年には米国で1日1回投与が可能となるよう設計された徐放性製剤「BELVIQ XR」が承認された。 同剤の複数の臨床第3相試験における主な有害事象は、糖尿病を合併しない肥満症では、頭痛、めまい、疲労、嘔吐、口内乾燥、便秘で、糖尿病を有する肥満症では、低血糖症、頭痛、背部痛、咳嗽、疲労だった。 BELVIQ[Terahata / 日本医療・健康情報研究所]