インスリン「1単位=0.01mL」 誤って100倍量を投与した事故が発生 医療機能評価機構が注意喚起
インスリンのバイアル製剤を使用するときは、専用注射器の使用の徹底を
日本医療機能評価機構は、注意すべき医療事故やヒヤリハット事例の内容をまとめた「医療安全情報」を毎月公表している。10月16日に公表された「No.131」では「インスリン単位の誤解(第2報)」がテーマとなった。
インスリンのバイアル製剤は、「1単位は0.01mL」であることを周知しておらず、1単位=1mLと誤解し、100倍量を投与してしまう事故が発生している。
ある病院では、看護師がスライディングスケールの指示で、「ヒューマリンR注100単位/mL」4単位を皮下注射することを確認した。看護師は「インスリン専用注射器」があることは知っていたものの、「インスリン4単位は4mLである」と思い込み、5mL注射器にヒューマリンR注4mLを準備し、注射してしまった。これは「400単位」に該当し、後にリーダー看護師への報告で「100倍量投与」が判明した。
また別の病院では、後期研修医が「ヒューマリンR注100単位/mL」を0.5単位/hで投与する際、「1単位=1mL」と思い込んで、「ヒューマリンR 持続静注0.5mL/h」と指示してしまった。看護師は「原液?」と思ったものの、オーダー画面上で「ヒューマリンR注」のみが処方されていたことから、誰にも確認せず、ヒューマリンR注の原液を20mL注射器に吸い、シリンジポンプにセットして0.5mL(50単位)/hの投与を開始してしまった。約4時間後に患者の血糖値が異常に低下(30mg/dL)していたことから、インスリンの過剰投与に気づいた。
いずれのケースでも、バイアル製剤を使用する際に、▼インスリン1単位=1mLと思い込んでいた、▼インスリン専用注射器を用いていなかった、▼「おかしい」と思った場合でも、誰にも確認をしなかった——という複合的な要素が重なり、事故が生じている。
2004年10月から2006年12月にも同様の事故が起きており、同機構は「医療安全情報 No.6」を公表し注意を喚起しているが、事故を未然に防げなかった。
機構では、▽インスリンのバイアル製剤は「1単位=0.01mL」であることの教育を徹底する、▽インスリンのバイアル製剤を使用する際は、専用注射器を用いることを徹底する、▽インスリンのバイアル製剤のそばに専用注射器を置く—といった基本的事項を再確認するよう医療機関に注意喚起している。
医療機能評価機構
医療安全情報 No.131「インスリン単位の誤解(第2報)」