高齢患者さんの糖尿病診療、その特徴と注意点をわかりやすく解説
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第27回 高齢者糖尿病診療の特徴と注意点(1)(本文より)
はじめに
日本の高齢者の割合は増え続けています。平成27年簡易生命表によると、日本人の平均寿命は男性80.79歳、女性87.05 歳と前年より男性0.29年、女性0.22年伸びています。65歳以上の高齢化率は26%で高齢者は4人に1人を超える超高齢社会に突入しました。当院の外来でも糖尿病患者の平均年齢はゆっくり上昇しています。高齢糖尿病患者の指導は困難な事も多く、落とし穴もあります。単なる糖尿病患者ではなく「高齢というハンディーを抱える糖尿病患者」としての視点が必要です。第1回は高齢者の全般的な特徴について考えてみます。
高齢者と壮年者との相違
高齢糖尿病患者の特徴は何でしょうか。高齢者が糖尿病に大きく影響するのは骨格筋量の低下でしょう(文献1)。若い症例では内臓脂肪肥満がインスリン抵抗性を惹起しますが、骨格筋量低下によるサルコペニアもインスリン抵抗性を引き起こし、食後高血糖を惹起します。壮年・高齢患者自身は気づきにくいのですが、骨格筋の太さの減少だけでなく、筋細胞間は脂肪組織に置き換わり、そして活動量の低下は脂肪筋を増やすという悪循環となります。またうつや、食事内容の簡素化とそれに伴う低栄養があります。薬物療法でも低栄養患者では効き方が悪かったり、急な血糖低下を惹起したり、効果がムラになりがちです。
「糖尿病治療薬の特徴と服薬指導のポイント」では、日本糖尿病学会認定専門医であり、同学会の認定指導医でもある、加藤内科クリニック院長の加藤光敏先生に、ご自身の知識と経験を踏まえた服薬指導のポイントを、わかりやすく解説していただきます。