営業成績と社会人2年目の苦悩 インスリンとの歩き方
1型糖尿病患者の遠藤伸司さんによる連載「インスリンとの歩き方」は、第10回「表彰状の行方」を公開しました。社会人2年目となり仕事にも慣れてきたところで起きた心の葛藤。七転八倒の末に芽生えた野心とは?
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執筆者の遠藤さんは、中学生の頃に1型糖尿病を発症。以来、約30年間の療養生活の中で、留学や進学、就職、そして転職、プライベートまで幅広い経験を積み、なにかと無理をすることもあったようです。
連載では、そんな遠藤さんの半生を、糖尿病と上手につきあうためのコツやノウハウを中心に、実体験のエピソードを交えて語っていただきます。1型糖尿病患者さんをはじめ、2型糖尿病患者さん、糖尿病医療に携わる方々は、ぜひご一読ください。
第10回 表彰状の行方(本文より)
社会人1年目の僕は、かなり未熟な会社員だった。納車前の顧客の新車を電信柱へぶつけてしまったし、飛込訪問では渡した名刺を目の前でやぶられたりもした。上司はいつも怖かった。けれど、そんな僕でも手に入れられたものはあった。それは、いくつかの間違っていない敬語の使いかたと、車を素早く洗車することだった。(僕は15分で車をピカピカにするコツを知っている)。単月に最も多くの車を売った営業マンに送られる「新人のMVP賞」も手に入れた。
僕は、卒業式以外で、初めて表彰状をもらった。表彰状を見れば、「新人」とか、10月度とか11月度という「月度」という文字が書いてあった。まるで30日経てば、ビリッと破いて捨て去られるカレンダーの1ページのような表彰状だった。そういう表彰状よりも、高級ホテルの広間で、皆の前で渡されるような表彰状がほしいと思った。そして、時は勝手に過ぎて、勝手に僕は社会人2年目になった。