糖尿病療養指導士の活躍に期待 糖尿病医療の40年の歴史を調査
2016.05.12
全国の医療機関で、0GTT(経口ブドウ糖負荷試験)75g法の実施率が99%に上り、SMBGの導入率は99%に増加し、インスリンポンプを用いたCSII(持続皮下インスリン注入療法)導入施設は38%に上ることが、鈴木和枝・前東京聖栄大学管理栄養学科教授らの調査で明らかになった。
日本の糖尿病診療と教育活動の歴史 過去40年の調査から
鈴木和枝氏(前東京聖栄大学管理栄養学科教授)らは1972年、1982年、1992年、2002年と10年間隔でアンケート調査を実施し、今回の調査は2012年に行った。糖尿病に関心が高い全国2,030の医療機関を対象に実施した(回答数:887施設)。SMBG(血糖自己測定)やCSII(インスリンポンプ療法)の実施率が上昇
SMBG(血糖自己測定)は、1981年のインスリン自己注射の保険適用に続き、1986年より保健適応の承認を受け、その後1994年、2000年、2008年と3回の診療報酬の改更が行われた。これまで1型糖尿病に限った適用範囲が、2000年からは一部の2型糖尿病へ、さらに2008年からは2型糖尿病への適用範囲が拡大した。これらの影響を受け、SMBGの導入率は調査開始時の1982年の37%から2012年には99%に増加した。 その背景として、血糖測定器や穿刺器の目覚しい改良とともに、SMBGの導入により良好な血糖コントロールが可能になり、糖尿病合併症の発症や進展を抑制できるという報告が増えたことが挙げられる。 インスリンポンプを用いたCSII(持続皮下インスリン注入療法)は、2012年に診療報酬が増額した影響もあり、導入施設は2012年には全体の38%に上った。 また、CGMは血糖の日内変動を詳細に把握でき、血糖コントロールの改善や合併症の進展予防に寄与しうる治療法として期待されている。CGMは今後、さらなる臨床成果の蓄積と普及啓発活動により、導入率は確実に増加するとみられる。 SMUG(尿糖自己測定)による糖尿病のコントロール効果も注目されており、「試験紙に尿をかけるだけ」という簡便さや、非侵襲性、経済的な負担の軽減、さらには安全性も高いことから、SGLT2阻害薬使用患者を除く2型糖尿病患者の食後高血糖を反映する手段として優れているとされている。 2012年度から診療報酬として算定が認められた「糖尿病透析予防管理料」は、糖尿病腎症が急増している現状を解消するために、合併症の発症や進展を阻止することを目標に新設された。今回の調査成績によると、申請施設数は454施設、全体の69%で、とくに大学病院と一般病院での導入率が高く、チーム医療の推進が示唆された。日本糖尿病療養指導士(CDEJ)の活動に期待
日本糖尿病療養指導士(CDEJ)とは、日本糖尿病療養指導士認定機構の設立後に誕生し、糖尿病治療にもっとも大切な自己管理(療養)を患者に指導できる医療スタッフ。糖尿病とその療養指導全般に関する適切な知識と、療養指導を行える熟練した経験をもつ看護師、管理栄養士、薬剤師、臨床検査技師、理学療法士などに与えられる資格だ。CDEJの第1回認定試験は2001年に行われた。 CDEJの資格保有者は2015年時点で1万7,600人超に上る。鈴木氏らの調査によると、CDEJのいる医療機関は2002年には64%だったが、2012年には79%に上昇している。CDEJがいることで高度で良質な糖尿病診療を提供できるようになったといえる。 また、地域糖尿病療養指導士(LCDEJ)は、糖尿病の地域医療において重要な役割を果たす存在として、今後の活躍が期待される。 「日本糖尿病療養指導士の認定資格の取得による影響は大きく、管理栄養士・栄養士などの意識改革、ひいては患者指導に対する意欲の向上をもたらしている」と鈴木氏は言う。 糖尿病専門外来と糖尿病教室の実施率は過去40年間、高く維持されているが、大学や一般病院で実施率が高く、教育活動を実施するために専門スタッフの確保が重要であることが示唆された。一方、調査では医療連携の導入への機運は高く、日本糖尿病協会の活動への参画によって、教育活動の充実を図ろうとする動向が示唆された。[Terahata / 日本医療・健康情報研究所]