脳による血糖調節メカニズムを解明 インスリンが視床下部を介して肝臓の糖産生を抑制

2016.03.15
 金沢大学新学術創成研究機構の井上啓教授らの研究グループは、インスリンが視床下部を介して肝臓の糖産生を抑制する仕組みについて解析を行い、そのメカニズムの解明に成功した。

脳による血糖調節の分子メカニズムを解明

 糖尿病・肥満では、脳による肝臓の糖産生の調節が破綻していることが知られている。脳の視床下部は、ホルモンや栄養素の変化に応じて、肝臓のブドウ糖の産生(糖産生)を調節し、血糖値を制御するという役割を担っているが、視床下部が肝臓の糖産生を制御するメカニズムは明らかにされていなかった。

 今回、井上教授らは、視床下部がインスリンを感知し、迷走神経の活動を抑制することで、肝糖産生を抑制すること、さらには、その作用がα7型ニコチン性アセチルコリン受容体を介した肝臓のインターロイキン6の分泌調節により制御されることを明らかにした。

 研究チームは、インスリン無投与群(コントロール)あるいはインスリン投与群において、迷走神経の活動を測定した。その結果、インスリン投与群では、迷走神経の活動が低下することを確認した。

 アセチルコリン受容体には、ムスカリン型とニコチン型があり、ムスカリン型は5種類の存在が認められている。一方で、ニコチン型は、16種類のサブユニットのうちの5つのサブユニットが集まって構成する5量体構造をしており、その種類は豊富である。α7と呼ばれるサブユニットが5つ集まって構成するα7型受容体は、神経やマクロファージに発現している。

 マクロファージなどの免疫系細胞から産生されるサイトカインは炎症に伴い増加し、体の炎症応答を引き起こす。一方で、食事後などでの一過性の増加は、肝臓での糖産生を減少させる。

 今回の研究結果は、糖尿病・肥満の病態の解明だけでなく、糖尿病・肥満と密接に関連するメタボリックシンドロームの新しい予防薬や治療薬の開発につながるものと期待される。

 研究成果は、米科学誌「Cell Reports」オンライン版に発表された。

金沢大学新学術創成研究機構

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