患者さんが血糖変動を理解することの重要性と、その指導法とは?
糖尿病専門医による知見を集約した「糖尿病情報スクランブル」では、松葉育郎先生による「糖尿病診療の目」の第3回を公開しました。
連載「糖尿病診療の目」へ ▶
「糖尿病診療の目」では、長年、糖尿病専門医として臨床に携わってきた松葉医院院長の松葉育郎先生に、その経験から得られた知識を披露していただきます。糖尿病医療に長年携わってきた専門医は、どのような視点を持って患者さんの情報を整理・把握し、診療に何を目指しているのでしょうか。糖尿病診療のヒントとして、今後に役立つ知識として、頭の中の引き出しにしまっておきたい情報を定期的にお届けします。
糖尿病診療の目 第3回
「患者さんが血糖変動を理解することの意味
―その重要性と指導法―」 (本文より)
第1回では『糖尿病治療の目指すところは?』と題し、血糖、体重、血圧、血清脂質の良好なコントロール状態の達成と長期的な維持が求められているお話をしました。第2回『求められる血糖コントロール値とは?』では、血糖の管理目標の実臨床(Real World)での到達度をお話いたしました。今回は、皆さんが最も身近に考えている血糖について、患者さん自身がどのように取り組んでいけるかを具体的に考えてみます。
患者さんは、こうしたら血糖値が下がり、糖尿病のコントロールは改善するとさまざまな指導を受けて実践を求められています。自分自身で工夫をしたりしても、自己注射をしている患者さんを除くと、継続的に長期にわたり血糖値の変化を知ることは、保険診療が適応されないため、費用の面なども含め難しいのが現状です。
一人ひとりの患者さんの個性に合わせて治療を組み立てるためには、血糖の動きを知ることは欠かせない情報であるはずです。自分の血糖値の変化をまったく知らずに、もしくは、血糖を測ることを知らずに、糖尿病の治療に取り組んでいくということは、羅針盤を持たずに、大海原に海図だけで船出するような危うさを感じるのは私だけでしょうか? HbA1cだけを知っていれば、十分な糖尿病のコントロールが達成できるのでしょうか?