糖尿病に併存するうつを見落とさないために 身体疾患患者のメンタルケアモデル開発ナショナルプロジェクト

2014.02.14
 「身体疾患患者のメンタルケアモデル開発ナショナルプロジェクト 糖尿病に併存するうつを見落とさないために 包括的なうつ管理のためのプログラム:導入編」が、1月に国立国際医療研究センターで開催された。

 精神障害の受療患者数は、いまやがんや糖尿病をはるかに上回り、300万人を超えると推計されている。日本は、今後ますます進む超高齢化社会での精神疾患患者への対応、高い自殺者数の問題、同領域における社会的経済損失など、さまざまな社会問題を抱えている。

 このような現状に対応するために、平成25年度より施行された次期地域医療計画で、従来の4大疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病)に精神疾患が加わり、「5大疾病」として新たな枠組みのもと都道府県単位での疾病対策が始まった。

 また、糖尿病は精神疾患と併存しやすく、両疾患の併存は生命予後を悪化させる可能性があることが指摘されており、身体疾患でのメンタルケアを促す環境整備が求められている。

 そうした中、日本の6つの国立高度専門医療研究センター(NC)が共同で取り組む「メンタルケアモデル開発ナショナルプロジェクト」が2012年にスタート。施策の1つとして、各NCが専門とする疾患領域でうつ病の評価・診断・管理を行うコーディネーターの養成を掲げ、これまで関連学会などで研修を実施している。

糖尿病有病者は、うつ病を併発しやすい

 慢性的な身体疾患に伴い抑うつや不安などの症状を呈することは珍しいことではない。糖尿病領域ではこうした精神疾患の合併についてはかねてから報告されている。

 糖尿病有病者は、うつ病を併発しやすいことが知られている。糖尿病とうつ病の併発について調べた39の研究をメタ分析した研究では、糖尿病有病者がうつ病を併発している比率は11.4%、うつ病を併発している疑いがあるのは31.0%であることが示された。

 糖尿病に起因する脳卒中や心筋梗塞といった合併症は、患者の機能予後や生命予後の決定因となるので、合併症の予防は、糖尿病の治療において、重要であると考えられている。

 うつ病を併発することで、糖尿病に起因する合併症の併発率と、合併症の経過が悪化する可能性があり、また、うつ病併存糖尿病患者では、治療へのアドヒアランスが低下することが指摘されている。

 近年は、身体疾患に伴う精神疾患に対して、精神疾患を治療することにより、精神疾患ばかりでなく、身体疾患の予後改善にも寄与できるという期待も広がっている。

 しかし実際に、身体疾患治療とメンタルケアを両立できている臨床現場は多くはない。両立に不可欠なのは、身体科専門医と精神科専門医との連携を補強する「コラボレイティブケア」の強化、および慢性疾患の治療を地域で担う「かかりつけ医」のうつ病やうつ状態に関する診断・治療能力の向上支援だ。

 現実は、「かかりつけ医」におけるメンタルケア啓発は進められているが、海外で推奨されている精神科専門医との継続的な連携が図られている事例は多くない。さらに、エビデンスを蓄積する臨床研究の基盤整備も十分とはいえない。

身体疾患とうつ病等の治療の最適化を促進

 こうした課題があるなか、昨年度から開始されたのが、国立高度専門医療研究センター全6センターが協同する「身体疾患患者へのメンタルケアモデル開発に関するナショナルプロジェクト」だ。

 同プロジェクトの目標は、慢性身体疾患を有する患者のうつ病の評価と治療の連携モデルを開発することで、身体疾患とうつ病の治療の最適化を促進し、健康寿命の延伸を目指すことだ。

 プロジェクトの構成は大きく、下記の三要素に分けられる。
(1)各センターが所管する専門疾病の医療チームのための包括的なうつ管理のための研修を開発・実施する。
(2)治療モデルを多次元的に開発して導入先進事例を紹介する。
(3)臨床支援モデルの開発をめざし、治療モデルの効果検証研究および身体疾患とうつに共通する病態解明につながる研究を並行して実施する。

 同プロジェクトの目的は、各ステップにおいて適切な技能を有する専門家が、適時に適切な治療を提供できる仕組みを整備することだ。当面の方向性は次の通りとなる。
(1)専門疾病医療機関における精神科医等の専門の医師の配置を推奨する。
(2)院内に窓口と基本的なコーディネートを行うチームを作り、院内または地域の精神科医等の専門の医師との連携を強化し、総合病院精神科機能の「実効上」の強化をめざす。

うつ病治療におけるコーディネート機能を担える人材を養成

 具体的には、ステップ1としては、うつ病やうつ状態が疑われる患者に対して、自己記入式質問紙法「PHQ-9」を用いたスクリーニングをすることから始まる。その結果、うつ病が疑われる患者に対して、定期的にうつ病の評価をし、状態が改善しない場合はより詳細な評価や治療ができる精神科専門医に紹介する。

 ステップ2では、軽症から中等症の患者に対する介入があげられている。睡眠衛生教育、運動療法など、限られた医療資源で実施できる心理社会的介入も有効と考えられている。

 こうしたステップ2の治療に反応しない人や、中等症から重症の人には、抗うつ薬や、認知行動療法などの高強度の心理社会的介入、共同的ケアなどの実施が推奨されている(ステップ3)。

 研修の最終目標は、拠点病院でうつ病治療におけるコーディネート機能を担える人材を養成することにある。身体疾患を伴ううつ病の段階的治療において、ステップ1の介入であるうつ病への「気づき」を担い、ステップ2以降の専門的介入を行える医療者につなげられることが、コーディネーターに求められている。

 これまでに、関連学会を中心に研修を行っており、既にある総合病院精神科の機能を別の角度から補完していくような形で、身体疾患患者へのうつ病スクリーニングや積極的なモニタリングができるコーディネーターの養成を実施している。

 研修プログラムは、各NCと共同開発しており、NCNPでは基本的な必須カリキュラムを作成するなどの基盤を整備するとともに、研修時の講師を派遣するなどの役割を担っている。

メンタルケアモデル開発ナショナルプロジェクト(国立精神・神経医療研究センター)

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