糖尿病と高血圧の合併患者ではBMI低値はCVDのリスク要因になる

2013.12.06
 2型糖尿病と高血圧を合併する患者では、BMIの低値が心臓血管疾患(CVD)のリスク要因となるという研究を、名古屋大学大学院医学研究科循環器内科学の研究チームが、9月にアムステルダムで開催された欧州心臓学会(ESC)会議で発表した。

 同研究は「名古屋ハートスタディ」の成果のひとつ。名古屋ハートスタディは、2型糖尿病もしくは耐糖能異常を合併する高血圧患者において、アンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)とカルシウム拮抗薬(CCB)の効果を比較した試験だ。

 肥満が心臓血管疾患のリスク要因であることはよく知られている。しかし、糖尿病発症時に正常体重(BMI 18.5以上、24.9以下)であった患者の方が、過体重(BMI 25.0以上、29.9以下)あるいは肥満(BMI 30.0以上)であった患者よりも死亡率が高いという現象は「肥満パラドックス」と呼ばれ、脳卒中、心臓麻痺、虚血性心疾患、腎臓病をもつ患者について報告されている。

 肥満パラドックスは糖尿病患者において、2012年にはじめて報告されたが(JAMA 2012; 308: 581-590)、肥満と2型糖尿病、高血圧を合併している患者での心臓血管疾患イベントの関連については、これまで解明されていなかった。

 研究では、BMIと高血圧、耐糖能異常を合併した患者の心臓血管疾患イベントの関連を評価した。名古屋ハートスタディに登録された日本人患者は1,105人で、2004年10月~2009年1月に登録された。追跡期間中央値3.2年のフォローアップを行った。1次エンドポイントは急性心筋梗塞、脳梗塞、冠動脈血行再建術施行、心不全による入院、心臓突然死からなる複合項目とした。試験の最長フォローアップ期間は2,126日(5.8年)だった。

 ベースライン時のBMIによって、次の4つのグループに分類した。(1)BMI 23未満(n=283)、(2)BMI 23以上24.99以下(n=290)、(3)BMI 25以上27.49以下(n=277)、(4)BMI 27.50以上(n=255)。

 1次エンドポイントでの発症は、(1)42人(14.8%、4.6/100人年)、(2)24人(8.3%、2.3/100人年)、(3)27人(9.7%、2.8/100人年)、(4)13人(5.1%、1.5/100人年)となった。

 BMI値の増加にともない、耐糖能異常と高血圧を合併した患者で、心臓血管疾患リスクが減少するという結果になった。年齢、性別、喫煙歴などの調整後も、BMI低値のグループは最も高い心臓血管疾患発生率を示し、BMI高値のグループでは発症率が低下した。もっともBMI値の高いグループでは、もっとも低いグループに比べCVDリスクは3分の1以下になった。

 「耐糖能異常と高血圧を合併している患者では、疾病が重症であることにより体重を失いBMIが低下し予後が悪化し、肥満パラドックスが示されている可能性がある。ただ今回の研究は、肥満が心臓血管疾患のリスク要因であるという事実を覆すものではない」と、研究者は説明している。

Low BMI is a risk factor for CVD in hypertensive patients with diabetes(欧州心臓学会 2013年9月3日)

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