糖尿病の医療費試算、年間自己負担額は4~13万円

2012.07.23
 厚生労働省の「国民医療費の概況」によると、平成21年度の国民医療費は36兆67億円(国民1人当たりの医療費は28万2400円)で、そのうち糖尿病の医療費は1兆1854億円を占めていると報告されています。では、実際、糖尿病で治療を行うと医療費はいくらかかるのでしょうか。糖尿病ネットワークは、2012年度診療報酬・薬価改定を受け試算を行い、糖尿病の医療費コーナー「糖尿病になったらいくらかかる?」で公開しました。
 医療経済研究機構の「政府管掌健康保険における医療費等に関する調査研究報告書」によると糖尿病患者一人当たりの平均的な医療費は年間24.7万円(平成15年度:3割負担では7.4万円=月額約6,000円)と報告されています。

 しかし、糖尿病は、治療内容や処方する薬剤、合併症の有無などにより個々の医療費は異なります。そこで、糖尿病ネットワークでは、一定の条件を仮定し、治療方法に応じて3つのケースを想定、1カ月にかかる医療費と自己負担額の目安を算定してみました。

【ケース1/食事・運動療法のみ】
 再診料や特定疾患療養管理料、検査料などのベーシックな診察費用のみで、月額の医療費は12,130円、自己負担額(3割)は約3,600円。年間の自己負担は約4万3,000円。

【ケース2/経口薬療法(2種類)】
 2種類の薬剤を院外処方された場合、処方箋料、調剤料、薬剤料などが加わり、月額の医療費は約2万5,110円、自己負担額(3割)は約7,500円。年間の自己負担は約9万円。

【ケース3/インスリン療法+経口薬療法+血糖自己測定(月60回)】
 インスリン療法は、薬剤の費用に、在宅自己注射指導管理料や血糖自己測定の指導管理加算などが加わり、月額の医療費は3万6,580円で、自己負担額(3割)は約1万1,000円。年間の自己負担は約13万2,000円。

 試算した結果、治療方法に応じて、年間の自己負担額は約4~13万円程度となりました。さらに、高血圧や高脂血症、腎症などの合併症が加わるとこれらにプラスして薬剤や検査費用などが加算されます。2009年に糖尿病ネットワークが行った「糖尿病の医療費」に関するアンケート調査で、患者さんの7割が"重い負担を感じている"と回答しているように、糖尿病は長期にわたって定期的な通院を要するので、患者さんにとっては切実な問題です。

 なお、糖尿病ネットワークでは、2006年から医療費試算を行っており、2年毎の診療報酬・薬価改定に合わせ、ほぼ同条件で再計算を行い紹介してきました。経年で比較してみると、診察料関連はそれほど変化していませんでしたが、院外処方での薬代は低下傾向が見受けられました。

 本コーナーを参考に、医療費という側面から、ご自身の療養生活や健康づくりを見直してみてはいかがでしょうか。

過去3回の改訂からみた糖尿病の月額医療費試算
  ケース1 ケース2 ケース3
2006年 3,790円(12,660円) 7,950円(14,320円+12,200円) 10,950円(26,620円+9,910円)
2008年 3,654円(12,180円) 7,698円(13,900円+11,760円) 11,091円(26,200円+10,770円)
2010年 3,780円(12,600円) 7,824円(14,320円+11,280円) 11,160円(26,620円+10,580円)
2012年 3,651円(12,170円) 7,533円(13,890円+11,220円) 10,974円(26.190円+10,390円)
*表内数字は、3割の自己負担額。括弧内は、開業医での診察料+院外処方での薬代
詳しくはこちら
糖尿病の医療費・保険・制度「糖尿病になったらいくらかかる?-2012年度版-」
平成21年度国民医療費の概況(厚生労働省)
糖尿病ネットワークアンケート「糖尿病の医療費」(2009年2月)

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