欧州糖尿病学会(EASD)注目の話題:インクレチン関連薬の治療効果

2010.10.01
 欧州糖尿病学会(EASD)第46回年次学術集会が9月20日~24日にスウェーデンのストックホルムで開催された。特に注目されたインクレチン関連薬は、「膵臓のβ細胞の減少を抑制する保護作用」、「体重増加を抑え肥満を改善する膵外作用」が期待されている。
 欧州糖尿病学会(EASD)会長のUlf Smith氏は、開会挨拶で「特にアジアで2型糖尿病が増加しており、もはやパンデミック(流行)といえる状況にある」と指摘。日本人では欧米ほど肥満していなくとも2型糖尿病になりやすいことが知られており、インクレチン関連薬の今後の動向が注目される。

インクレチン関連薬:効果と安全性の検証は発展途上にある

 インスリン製剤以外の多くの糖尿病治療薬が登場しており、インクレチン関連薬中心に注目を集めている。GLP-1受容体作動薬(エクセナチド、リラグルチド)、DPP-4阻害薬(シタグリプチン、ビルダグリプチン、サクサグリプチン)があり、さらに週1回の注射ですむGLP-1アナログ製剤やSGLT2阻害薬も開発段階にある。

インクレチン関連薬に関する主な発表:
  • β細胞保護:最良の選択は何か
  • 2型糖尿病の治療:GLP-1受容体作動薬「リラグルチド」の有効性
  • 「糖尿病医療の展望」:GLP-1およびインスリン療法
  • 包括的な血糖コントロール:DPP-4阻害薬「サクサグリプチン」
  • 2型糖尿病は複合的治療へ:DPP-4阻害薬「リナグリプチン」
  • 2型糖尿病の初期治療の果たす役割:DPP-4阻害薬「シタグリプチン」

 ドイツのバート・ラウターベルク糖尿病センターのMichael Nauck氏は、インクレチン関連薬の治療効果と安全性について検討、GLP-1受容体作動薬であるエクセナチドやリラグルチドの膵内作用として、β細胞を増殖させる効果について報告した。「2型糖尿病でGLP-1分泌が低下した症例ではGLP-1受容体作動薬が直接補充できる点で有利」としたが、DPP-4阻害薬はインスリン分泌及びプロインスリン/インスリン比を改善することも報告されている。この改善効果は3年が経過した後も継続して認められた。

 インクレチン関連薬の膵外作用の研究でも、新たな成果が発表された。GLP-1はGLP-1受容体に結合し、インスリン分泌を促進する。心筋と血管中のGLP-1受容体に関して、動物実験でエクセナチドとリラグルチドにより心臓組織の損傷が減少することが指摘されたのは興味深い。Nauck氏は「心臓血管合併症のリスクを低下させる創薬ターゲットとなる可能性も示された」と指摘した。

 「GLP-1受容体作動薬およびインクレチン関連薬による治療の有用性および安全性についての試験は継続されている。近い将来に回答が示されるだろう」とNauck氏はまとめた。
(9月22日 プレスリリース:NON-INSULIN DIABETES DRUGS: IMPORTANT QUESTIONS ABOUT BOTH ADDITIONAL BENEFITS AND SAFETY CONCERNS

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