厚生労働省、インクレチン関連薬に「使用上の注意の改訂指示」

2010.04.28
医薬品医療機器総合機構は4月27日付けで、「使用上の注意の改訂指示」(医薬品)(2010年4月27日指示分)を発出し、インクレチン関連薬についての注意事項を公表した。

 「使用上の注意の改訂指示」は厚生労働省が製薬企業に指示した、医薬品を使う上での新たな注意事項。製薬企業はこれに基づき添付文書を改訂する。

 今回の指示は、SU薬とインクレチン関連薬の追加投与後に、低血糖による意識障害を起こした症例が報告されたのを受け発出されたもの。

 日本糖尿病協会と日本糖尿病学会は専門家からなる独立委員会である「インクレチンとSU薬の適正使用に関する委員会」を立ち上げ、すでにインクレチン関連薬とスルホニル尿素薬(SU薬)の適正使用についての勧告を公表している。

 同委員会によると、SU薬とシタグリプチンとの併用で重篤な低血糖を起こすケースとして、(1)高齢者、(2)軽度腎機能低下、(3)SU薬の高用量内服、(4)SU薬ベースで他剤併用、(5)シタグリプチン(製品名:ジャヌビア、グラクティブ)内服追加後早期に低血糖が出現――の 5つの特徴が認められた。

 基本的には医療従事者向けに出された情報であり、今後も症例が集められ解析が行われる。ただし低血糖のリスクのある患者では、低血糖への対策を知っておいた方が良い場合がある。インクレチン関連薬を服用している患者は主治医に相談し指導を受けるなど、十分に対応することが望ましい。

GLP-1アナログ製剤「ビクトーザ」
(一般名:リラグルチド)

「【措置内容】以下のように使用上の注意を改めること。

[慎重投与]の項に

スルホニルウレア剤を投与中の患者

を追記し、[重要な基本的注意]の項の低血糖症状に関する記載を

「本剤の使用にあたっては、患者に対し低血糖症状及びその対処方法について十分説明すること。経口糖尿病用薬と併用した場合、低血糖の発現頻度が単独の場合より高くなるので、定期的な血糖測定を行うこと。特に、スルホニルウレア剤と併用する場合、低血糖のリスクが増加するおそれがある。スルホニルウレア剤による低血糖のリスクを軽減するため、スルホニルウレア剤と併用する場合には、スルホニルウレア剤の減量を検討すること。

と改め、[副作用]の「重大な副作用」の項の低血糖に関する記載を

「低血糖:
低血糖及び低血糖症状(脱力感、倦怠感、高度の空腹感、冷汗、顔面蒼白、動悸、振戦、頭痛、めまい、嘔気、知覚異常 等)があらわれることがある。特に経口糖尿病用薬と併用した場合、多く発現することが報告されている。
低血糖症状が認められた場合は、本剤あるいは併用している経口糖尿病用薬を一時的に中止するか、あるいは減量するなど慎重に投与すること。
また、DPP-4阻害剤で、スルホニルウレア剤との併用で重篤な低血糖症状があらわれ、意識消失を来す例も報告されていることから、スルホニルウレア剤と併用する場合には、スルホニルウレア剤の減量を検討すること。 低血糖症状が認められた場合には通常はショ糖を投与し、α-グルコシダーゼ阻害剤との併用により低血糖症状が認められた場合にはブドウ糖を投与すること。」

と改める。

DPP-4阻害薬「ネシーナ錠」
(一般名:アログリプチン安息香酸塩)

【措置内容】以下のように使用上の注意を改めること。

[重要な基本的注意]の項の低血糖症状に関する記載を

「本剤は他の糖尿病用薬と併用した場合に低血糖症状を起こすおそれがあるので、これらの薬剤との併用時には患者に対し低血糖症状及びその対処方法について十分説明し、注意を喚起すること。本剤とスルホニルウレア剤との併用における臨床効果及び安全性は確立されていないが、DPP-4阻害剤とスルホニルウレア剤を併用する場合、低血糖のリスクが増加するおそれがある。DPP-4阻害剤とスルホニルウレア剤を併用する場合にはスルホニルウレア剤による低血糖のリスクを軽減するため、スルホニルウレア剤の減量を検討すること。

と改め、[副作用]の「重大な副作用」の項を

「低血糖症状があらわれることがあるので、患者の状態を十分に観察しながら投与すること。低血糖症状が認められた場合、本剤あるいは併用している糖尿病用薬を一時的に中止するかあるいは減量するなど慎重に投与すること。なお、他のDPP-4阻害剤で、スルホニルウレア剤との併用で重篤な低血糖症状があらわれ、意識消失を来す例も報告されている。また、本剤の投与により低血糖症状が認められた場合には通常ショ糖を投与するが、α-グルコシダーゼ阻害剤との併用により低血糖症状が認められた場合にはブドウ糖を投与すること。」

と改める。

DPP-4阻害薬「ジャヌビア錠/グラクティブ錠」
(一般名:シタグリプチンリン酸塩水和物)

【措置内容】以下のように使用上の注意を改めること。

[慎重投与]の項の「他の糖尿病薬を投与中の患者」の記載を

「他の糖尿病(特に、スルホニルウレア剤)を投与中の患者」

と改め、[重要な基本的注意]の項の低血糖症状に関する記載を

「本剤の使用にあたっては、患者に対し低血糖症状及びその対処方法について十分説明すること。特に、スルホニルウレア剤と併用する場合、低血糖のリスクが増加する。スルホニルウレア剤による低血糖のリスクを軽減するため、スルホニルウレア剤と併用する場合には、スルホニルウレア剤の減量を検討すること。

と改め、[副作用]の「重大な副作用」の項の低血糖症に関する記載を

「低血糖症:
他の糖尿病薬との併用で低血糖症(グリメピリド併用時5.3%、ピオグリタゾン併用時0.8%、メトホルミン併用時0.7%)があらわれることがある。特に、スルホニルウレア剤との併用で重篤な低血糖症状があらわれ、意識消失を来す例も報告されていることから、スルホニルウレア剤と併用する場合には、スルホニルウレア剤の減量を検討すること。また、他の糖尿病薬を併用しない場合でも低血糖症(1.0%)が報告されている。低血糖症状が認められた場合には、糖質を含む食品を摂取するなど適切な処置を行うこと。」

と改める。

DPP-4阻害薬「エクア錠」
(一般名:ビルダグリプチン)

【措置内容】以下のように使用上の注意を改めること。

[慎重投与]の項に

スルホニルウレア剤を投与中の患者

を追記し、[重要な基本的注意]の項の低血糖症状に関する記載を

本剤の使用にあたっては、患者に対し低血糖症状及びその対処方法について十分説明すること。特に、スルホニルウレア剤と併用する場合、低血糖のリスクが増加するおそれがある。スルホニルウレア剤による低血糖のリスクを軽減するため、スルホニルウレア剤と併用する場合には、スルホニルウレア剤の減量を検討すること。

と改め、[副作用]の「重大な副作用」の項の低血糖症に関する記載を

「低血糖症:
本剤の投与により低血糖症があらわれることがある。他のDPP-4阻害剤で、スルホニルウレア剤との併用で重篤な低血糖症状があらわれ、意識消失を来す例も報告されていることから、スルホニルウレア剤と併用する場合には、スルホニルウレア剤の減量を検討すること。低血糖症状が認められた場合には、糖質を含む食品を摂取するなど適切な処置を行うこと。」

と改める。

独立行政法人医薬品医療機器総合機構

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