SGLT2阻害薬は非糖尿病患者の心不全入院も減らす可能性

2022.04.28
 SGLT2阻害薬は、糖尿病の有無にかかわらず、心不全入院や心血管死を減らす可能性が示された。ただし、腎疾患の進行や全死亡の抑制効果は明らかでなく、性器感染症は有意に増加するという。四川大学(中国)のXinyu Zou氏らが行ったシステマティックレビューとメタ解析の結果であり、詳細は「Annals of Internal Medicine」に4月12日掲載された。

 これまでに実施された複数の無作為化比較試験(RCT)によって、2型糖尿病患者におけるSGLT2阻害薬の心保護効果のエビデンスは確立したと言える。さらに、糖尿病のない心不全患者に対するSGLT2阻害薬の有用性も示唆されている。Zou氏らは、2型糖尿病の有無にかかわりなく、心不全患者全般に対する同薬の有用性をシステマティックレビューとメタ解析で検討した。

 システマティックレビューの文献検索には、PubMed、Web of Science、Cochrane Library、Embaseを用い、成人心不全患者を対象として、SGLT2阻害薬による介入を行ったRCTを抽出。介入から6ヵ月後、1年後、および2年後の心不全入院リスクを比較検討した。

 メタ解析の結果、SGLT2阻害薬が処方された患者群の心不全入院リスクは対照群に比し、6ヵ月後は37%(95%信頼区間25~47)、1年後は32%(同20~42)、2年後は26%(同10~40)、有意に抑制されていたことが明らかになった。また、1年後の時点では、同薬が処方されていた群で心血管死が14%(同1~25)少なく、有意なリスク低下が認められた。

 一方、全死亡および腎疾患の病期進行や腎不全に関しては、対照群との間に有意なリスク差が観察されなかった。また、SGLT2阻害薬が処方された患者群は、性器感染症のリスクが2倍以上高かった〔相対リスク2.69(同1.61~4.52)〕。

 なお、心不全の診断後1年目からSGLT2阻害薬が処方されていた患者、および、他疾患で入院中に心不全を診断されるなど予後不良と考えられる患者において、対照群とのリスク差がより大きく、同薬の心保護効果が顕著に表れていた。

 以上より、糖尿病の有無にかかわらずSGLT2阻害薬は心不全入院リスクを抑制すること、そのメリットは介入から1年以内が最大であること、有害事象として性器感染症のリスクが上昇することなどが明らかになった。著者らは、「SGLT2阻害薬による心不全入院の抑制効果は、ベースライン時点の背景因子と介入期間の双方に依存する。臨床医は、性器感染症のリスク増大と期待される治療効果とのバランスを考慮する必要がある」と述べている。

[HealthDay News 2021年4月12日]

Copyright ©2022 HealthDay. All rights reserved.
Photo Credit: Adobe Stock

糖尿病・内分泌プラクティスWeb 糖尿病・内分泌医療の臨床現場をリードする電子ジャーナル

糖尿病関連デジタルデバイスのエビデンスと使い方 糖尿病の各薬剤を処方する時に最低限注意するポイント(経口薬) 血糖推移をみる際のポイント!~薬剤選択にどう生かすか~
妊婦の糖代謝異常(妊娠糖尿病を含む)の診断と治療 糖尿病を有する女性の計画妊娠と妊娠・分娩・授乳期の注意点 下垂体機能低下症、橋本病、バセドウ病を有する女性の妊娠・不妊治療
インスリン・GLP-1受容体作動薬配合注 GIP/GLP-1受容体作動薬(チルゼパチド) CGMデータを活用したインスリン治療の最適化 1型糖尿病のインスリン治療 2型糖尿病のインスリン治療 最新インスリン注入デバイス(インスリンポンプなど)
肥満症治療薬としてのGLP-1受容体作動薬 肥満症患者の心理とスティグマ 肥満2型糖尿病を含めた代謝性疾患 肥満症治療の今後の展開
2型糖尿病の第1選択薬 肥満のある2型糖尿病の経口薬 高齢2型糖尿病の経口薬 心血管疾患のある2型糖尿病の経口薬

医薬品・医療機器・検査機器

糖尿病診療・療養指導で使用される製品を一覧で掲載。情報収集・整理にお役立てください。

一覧はこちら

最新ニュース記事

よく読まれている記事

関連情報・資料