【新型コロナ】オミクロン株の病原性と増殖能は従来株より低い 体重減少と呼吸器症状はみられず 東大医科研ほか

2022.01.25
 東京大学医科学研究所が、オミクロン株の病原性と増殖能を調べた結果、動物モデルでの肺での増殖能が従来株よりも低いことが示された。オミクロン株を感染させた動物では、体重減少と呼吸器症状の悪化がみられなかった。

 動物モデルでの成績がそのままヒトに当てはまるかどうか不明であるものの、オミクロン株の病原性と増殖能は、これまでの流行株と比較して低いことが示された。

 重症化しやすい高齢者や基礎疾患を有するヒト、あるいはワクチン接種を受けていないなど新型コロナウイルスに対する免疫を持っていないヒトに対して、オミクロン株がどのような病原性を示すのか今後も検証が必要としている。

オミクロン株の病原性と増殖能を従来の流行株と比較

 東京大学医科学研究所は、感染患者から分離したオミクロン株の性状を新型コロナの動物モデル(マウスおよびハムスター)を用いて評価し、従来の流行株と比較した結果、オミクロン株は、マウスやハムスターの上気道および下気道部で増殖するものの、その増殖力と病原性は従来の流行株よりも低下していることが明らかになったと発表した。

 研究は、同研究所ウイルス感染部門の河岡義裕特任教授らの研究グループが、東京大学、国立感染症研究所、米国ウィスコンシン大学、国立国際医療研究センター、米国ワシントン大学、米国マウントサイナイ医科大学、米国エモリー大学、米国国立衛生研究所、米国ユタ州立大学、米国ウィスコンシン州立衛生研究所、コロンビア国立大学、米国アイオワ大学、米国セントジュード小児研究病院との共同研究として行ったもの。研究成果は、「Nature」にオンライン掲載された。

 新型コロナウイルスは、宿主細胞表面のウイルス受容体(ヒトのアンジオテンシン変換酵素II:ヒトACE2)にスパイクタンパク質を介して結合することで感染を開始する。2021年11月に、スパイクタンパク質に少なくとも30ヵ所の変異を有するオミクロン株が南アフリカで初めて確認された。世界保健機関(WHO)は、同年12月にオミクロン株を懸念すべき変異株(VOC)に指定した。2022年1月現在、オミクロン株の流行は世界110ヵ所以上に拡大し、その感染者は日本も含めた世界各国で爆発的に増加している。

 ウイルス感染にとって重要な役割を担うスパイクタンパク質上の変異は、既存のワクチンや治療薬の効果を減弱させる可能性や、病原性や伝播力を変化させる可能性があるが、オミクロン株の基本性状は明らかにされていなかった。そこで研究グループは、新型コロナ感染モデル動物のマウスとハムスターを用いて、患者から分離したオミクロン株の病原性と増殖能を従来の流行株と比較した。

オミクロン株では体重減少と呼吸器症状の悪化はみられず

 その結果、マウスの肺や鼻でのオミクロン株の増殖能は、ベータ株と比べて大幅に低いことが明らかとなった。また、オミクロン株を感染させたマウスでは、呼吸器症状の悪化も認められなかった。

 ベータ株は、南アフリカで最初に検出され、標準株と比較して伝播効率が上昇していることが推測されており、オミクロン株が確認されるまでは、VOCに分類されるウイルスのなかで、標準株からもっとも抗原性が離れたウイルスだった。

 続いて、ハムスターを用いて同様の解析を実施。オミクロン株が出現するまで流行の主流であったデルタ株と比較した。デルタ株感染ハムスターでは、体重減少と呼吸器症状の悪化が認められたのに対して、オミクロン株感染ハムスターでは、体重減少と呼吸器症状の悪化はみられなかった。

 また、オミクロン株は、ハムスターの鼻では良く増えたが、肺での増殖能はデルタ株よりも顕著に低いことが分かった。さらにコンピュータ断層撮影法(CT)を用いて、感染動物の肺を解析したところ、デルタ株感染ハムスターでは新型コロナ患者で見られるような肺炎像が観察されたが、オミクロン株感染ハムスターでは、軽度の炎症しかみられなかった。ヒトのhACE2を持つハムスターでも、オミクロン株の病原性と増殖能はデルタ株よりも低いことが明らかになった。

野生型マウスにおけるオミクロン株の増殖力と呼吸機能への影響
新型コロナウイルス・オミクロン株をマウスの鼻腔内に接種
(A) 感染後3日目の鼻と肺でのウイルス量を測定。オミクロン株はベータ株と比べて呼吸器での増殖が低かった。
(B) 呼吸機能の評価指標の1つである最大呼気流量は、気道の状態を測定できる指標。ベータ株では感染2日後に大幅な低下が認められ、気道の状態が悪化していたが、オミクロン株では感染後の低下は認められず非感染マウスと同程度だった。

野生型ハムスターにおけるウイルスの病原性と増殖力
新型コロナウイルス・オミクロン株をハムスターの鼻腔内に接種
(A) 接種後、非感染動物(対照群)と感染動物の体重を毎日測定。デルタ株感染群では体重の減少がみられたが、オミクロン株感染群では体重減少は認められなかった。
(B) 最大呼気流量は、デルタ株では感染5日後と7日後に大幅に低下し、気道の状態の悪化が認められたが、オミクロン株では感染後の低下は認められなかった。
(C) 感染後3日目の鼻と肺におけるウイルス量を測定した。鼻において、オミクロン株はデルタ株と同程度増殖していたが、肺でのウイルス量はデルタ株と比較して低下していた。
出典:東京大学医科学研究所、2022年

ヒトを対象とした検証が必要

 今回の研究により、新型コロナ動物モデルでのオミクロン株の病原性と増殖能は、これまでの流行株と比較して低いことが明らかになった。一方、動物モデルでの成績がそのままヒトに当てはまるかどうかは不明であり、「重症化しやすい高齢者や基礎疾患を有するヒト、あるいはワクチン接種を受けていないなど新型コロナウイルスに対する免疫を持っていないヒトに対して、オミクロン株がどのような病原性を示すのか、今後も検証が必要」と、研究グループでは述べている。

 「今回の研究を通して得られた成果は、変異株のリスク評価など行政機関が今後の新型コロナ対策計画を策定、実施する上で、重要な情報となる」と、している。

東京大学医科学研究所
SARS-CoV-2 Omicron virus causes attenuated disease in mice and hamsters (Nature 2022年1月21日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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