【新型コロナ】GLP-1受容体作動薬・DPP-4阻害薬・チアゾリジン薬がCOVID-19重症化を抑制する可能性

2型糖尿病患者はCOVID-19罹患時に転帰不良となりやすいことが知られているが、その一因として炎症反応調節不全の関与が想定されている。GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)やDPP-4阻害薬(DPP4i)、ピオグリタゾンなどの血糖降下薬は基礎研究で抗炎症作用を有することが報告されており、COVID-19患者の転帰を改善する可能性がある。
Nyland氏らは、56の大規模医療機関が参加している多国籍後方視的コホート研究「TriNetX COVID-19」のデータを用いて、これらの薬剤の処方と、COVID-19診断後28日以内の入院、呼吸器合併症、および死亡との関連を検討した。解析に際しては、年齢、性別、人種/民族、BMI、高血圧・虚血性心疾患・脳血管疾患・心不全・慢性腎臓病の既往などを交絡因子として影響を調整した。
結果を薬剤別に見ると、まず、前記3剤が処方されていない患者の23.5%が入院に至ったのに対して、GLP-1RAが処方されていた患者で入院に至ったのは15.7%と有意に低リスクだった〔リスク比(RR)0.67(95%信頼区間0.57~0.79)、P<0.001〕。呼吸器合併症を来した患者は同順に24.9%、15.3%であり、やはりGLP-1RAが処方されていた患者の方が低リスクだった〔RR0.62(同0.52~0.73)、P<0.001〕。さらに、死亡についても同順に3.3%、1.9%であり、GLP-1RA処方群が低リスクだった〔RR0.58(同0.35~0.97)、P=0.04〕。
同様に、DPP4iが処方されていた患者は、呼吸器合併症リスクが有意に低かった〔RR0.82(同0.74~0.90)、P<0.001〕。入院や死亡リスクとの関連は有意でなかった。また、入院を要した患者のうち、入院中にDPP4iが継続投与されていた患者は投与が中止された患者に比較し、呼吸器合併症〔RR0.67(同0.53~0.84)、P<0.001〕と死亡〔RR0.45(同0.28~0.72)、P<0.001〕のリスクが有意に低かった。
ピオグリタゾンが処方されていた患者は、前記3剤が処方されていない患者に比較し入院リスクが有意に低かった〔RR0.71(同0.54~0.93)、P=0.01〕。呼吸器合併症や死亡リスクとの関連は有意でなかった。
論文では結論として、「GLP-1受容体作動薬、DPP-4阻害剤、ピオグリタゾンなどの血糖降下薬の使用は、COVID-19に罹患した2型糖尿病患者の転帰を改善する可能性があり、ランダム化比較試験による検証が必要」とまとめられている。また、Nyland氏は、「糖尿病のような基礎疾患がありCOVID-19重症化リスクの高い患者に対して、ワクチン接種効果の補完となる可能性のある治療法の探索が、引き続き求められる」と述べている。
[HealthDay News 2021年10月8日]
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