成人発症の1型糖尿病患者の特徴は? 非糖尿病者と比較したMACEや死亡リスクの実態を報告
成人発症1型糖尿病患者の主要心血管イベント(MACE)および死亡リスクの実態が報告された。カロリンスカ研究所(スウェーデン)のYuxia Wei氏らの研究によるもので、詳細は「European Heart Journal」に5月14日掲載された。

1型糖尿病(T1DM)の治療は過去数十年の間に急速に進歩した。しかし、2型糖尿病(T2DM)の予後やその規定因子に関する知見が豊富に蓄積されてきているのに対して、T1DMのそれらの情報は依然として限られている。また、T1DMはかつて小児期の発症が多いと考えられていたことも関係して、成人後に発症したT1DMの予後に関する知見は極めて少ない。
これを背景としてWei氏らは、スウェーデンの全国民の医療情報が登録されているレジストリを用いたデータ解析を行い、成人発症T1DM患者の予後の実態と予後規定因子を検討した。
解析に用いたデータは、2001~2020年に診断されていた成人発症T1DM患者1万184人と、年齢、性別、居住地域をマッチングさせたT2DM患者37万5,523人、および非糖尿病者(対照群)50万9,172人であり、MACE(非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、心血管死)と全死亡の発生を2022年まで、10.2年(中央値)追跡。ハザード比(HR)と予後規定因子の人口寄与割合(PAR)を算出した。
解析の結果、対照群に比べて成人発症T1DM群はMACE[HR 1.30、95%信頼区間 1.17~1.45]、全死亡[HR 1.71、1.60~1.84]のリスクが有意に高かった。その一方、T2DM群との比較では、MACEリスクは有意に低かった[HR 0.67、0.60~0.75]。ただし全死亡リスクは、T2DM群との比較でも有意に高かった[HR 1.10、1.02~1.18]。
死因別の詳細な解析では、成人発症T1DM群は対照群との比較で、心血管死[HR 1.42、1.23~1.63]、がん死[HR 1.48、1.28~1.72]、感染症死[HR 2.55、1.77~3.69]のリスクが有意に高く、T2DM群との比較ではいずれも有意差がなかった。糖尿病性昏睡またはケトアシドーシスによる死亡リスクについては、T2DM群よりも有意に高かった[HR 7.04、4.54~10.9]。
成人発症T1DM群における予後規定因子は、全死亡に関しては喫煙(PAR 10.7%)、HbA1c7%以上(10.4%)の影響が大きく、MACEに関しては過体重・肥満(19.8%)、HbA1c7%以上(8.8%)、喫煙(8.4%)が関与していた。
なお、T1DMの診断年齢が40歳以上の患者群(T1DMの38.3%)でもほぼ同様の結果が得られたが、40歳未満で診断された患者群よりインスリンポンプの使用率が低く(追跡終了時点で26 対 14%)、T1DM診断3ヵ月以内のHbA1cが高い傾向があった(30歳未満 8.2%、30歳代 8.4%、40歳以上 8.7%)。
論文の上席著者である同研究所のSofia Carlsson氏は、「禁煙および体重と血糖の管理により、とくに中年期以降にT1DMと診断された患者の予後が有意に改善される可能性が示された。今後はこれらの問題をより深く掘り下げていきたい」と語っている。
なお、1人の著者がバイオ医薬品企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。
[HealthDay News 2025年5月16日]
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