【新型コロナ】医療従事者・自治体・ニュースからの情報提供は、予防行動を高めるのに貢献している?

2022.04.05
 東北大学は、新型コロナに対する4種類の予防行動[マスク着用・部屋の換気・ソーシャルディスタンス・人混みを避ける]の順守と、人物・機関・メディアといった情報源の利用との関連を調査した。

 その結果、医療従事者、専門家、政府・自治体、Twitter、ネットニュース、テレビ(ニュース)から情報を得ていた人では、予防行動で順守している割合が高いことが明らかになった。

 テレビやSNS、ネットニュースなどのメディアを通じた適切な情報提供は、新型コロナ予防で重要な役割を果たしていると考えられる。

 一方、利用している情報源によって、予防行動への順守の割合が異なり、4種類すべての予防行動と関連する情報源はないことも示された。提供されている情報の内容に「ムラ」があり、情報源の種類によって包括的ではない可能性もある。

メディアなどを通じた情報提供は予防行動の遵守に貢献している?

 新型コロナの予防行動に対して、人物や機関・メディアによる情報の提供は、重要な役割を果たしていると考えられる。しかし、これらの情報源を利用していない人が一定数いることや、提供された情報に有益な情報が含まれていない場合もある。

 そのことが、人々の予防行動の遵守の低下につながっている可能性がある。新型コロナについて、すべての人々に有益な情報が届くような情報の提供体制を構築することが重要だが、どのような方策が効果的かは明らかにされていない。

 そこで東北大学は、新型コロナに関する情報源の種類と、人々の予防行動との関連を調査した。研究は、同大東北大学大学院歯学研究科の草間太郎助教らの研究グループによるもの。研究成果は、「Healthcare」にオンライン掲載された。

 新型コロナ予防では、▼マスク着用、▼部屋の換気、▼ソーシャルディスタンス、▼人混みを避けるという、4つの予防行動の順守が依然として重要だ。これまでの研究で、予防行動の順守に対して、メディアなどの情報源の利用が影響することが示唆されている。

 研究グループは、新型コロナに対する予防行動について、細かな情報源の分類を用いて、複数の予防行動との関連を明らかにすることに取り組んだ。新型コロナに対する4種類の予防行動について、20種類の情報源の利用との関連を、経時的な変化を考慮して解明した。

4つの予防行動と20の情報源利用との関連を経時的に調査

 具体的に、20~79歳の男女を対象としたWeb調査を用いて縦断研究を実施した。対象者は、「日本における新型コロナウイルス問題による社会・健康格差評価研究」の2020年8~9月調査に参加した人のうち、「日本における社会と新型タバコに関するインターネット調査」の2021年2月調査にも継続して参加した1万8,151人。

 その結果、2020年時点での各予防行動を順守している人の割合は、「マスク着用」86.2%、「部屋の換気」46.9%、「ソーシャルディスタンス」45.4%、「人混みを避ける」62.6%だった。

新型コロナに対する各予防行動を遵守している人の割合

出典:東北大学、2022年

 4種類の予防行動中2種類以上で遵守割合が高いことと関連していた情報源は、▼医療従事者、▼専門家、▼政府・自治体、▼Twitter、▼ネットニュース、▼テレビ(ニュース)だった。

 すべての予防行動に関連している情報源はなかったが、メディアなどを通じた情報提供が予防行動の遵守に貢献している可能性が示唆された。

新型コロナに関する情報を得るために利用している情報源の割合

n=18,151 複数回答可
出典:東北大学、2022年

利用した情報源によって順守の割合が異なることも 提供内容に「ムラ」がある?

 研究では、結果変数として2020年・2021年調査時点での4種類の新型コロナに対する予防行動の順守の状況を用いた。予測変数として、2020年時点での人物・機関ベースの情報源(政府や医療者など)・メディアベースの情報源(テレビやSNSなど)の利用および調査時期(2020年、2021年)を用いた。

 共変量は、性別・年齢・所得・学歴・世帯人数・ヘルスリテラシー。分析は、一般化推定方程式を用いて、共変量を調整したうえで、各情報源の利用の有無によって、各予防行動を順守している人の割合が何%異なるかを95%信頼区間とともに算出した。対象者の平均年齢は51.7歳(SD=15.9)、男性が51.3%だった。

 研究では、特定の情報源を利用していることが、新型コロナに対する予防行動を順守していることと関連していたことが明らかになった。機関やメディアなどを通じた情報の提供が、予防行動の順守に重要な役割を果たしていたと考えられる。

 一方、4種類すべての予防行動と関連していた情報源もなかったことから、提供している情報の内容が包括的ではなく、情報源の種類によって提供していた内容に「ムラ」があった可能性があるとしている。

 「人物や機関・メディアによる情報の提供は、COVID-19に対する予防行動の遵守に対して、重要な役割を果たしていた可能性があります。しかし、これらの情報源を利用していない人が一定数いることや、提供された情報に有益な情報が含まれていないことが、予防行動の遵守の低下につながる可能性もあります」と、研究者は述べている。

 「COVID-19に関して、すべての人々に有益な情報が届くような、マルチチャネルによる情報の提供体制の構築が重要だと考えられます」としている。

各情報源の利用の有無と予防行動遵守割合との関連

個人の特性と他の情報源の利用を考慮した分析の結果、多くの情報源でCOVID-19の予防行動の遵守との正の関連が観察された。とくに医療従事者、専門家、政府・自治体、Twitter、ネットニュース、テレビ(ニュース)は複数の予防行動の遵守との関連がみられた。
出典:東北大学、2022年

東北大学大学院歯学研究科歯学イノベーションリエゾンセンター地域連携部門
Information Usage and Compliance with Preventive Behaviors for COVID-19: A Longitudinal Study with Data from the JACSIS 2020/JASTIS 2021 (Healthcare 2022年3月13日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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