SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬の併用により主要心脳血管イベントや心不全のリスクが低下

2022.03.03
SGLT2i+GLP-1RAで心不全・MACCEリスクがより低下する可能性

 SGLT2阻害薬(SGLT2i)とGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)の併用により治療されている2型糖尿病患者は、主要心脳血管イベント(MACCE)や心不全リスクが低いとする研究データが報告された。英マンチェスター大学のAlison K. Wright氏らが、医療データを用いて行ったコホート内症例対照研究の結果であり、詳細は「Diabetes Care」に1月31日掲載された。

 SGLT2iやGLP-1RAは血糖降下作用に加えて、MACCEや心不全のリスクを抑制する作用を有することが知られている。しかし、SGLT2iとGLP-1RAを併用した場合に、MACCEや心不全リスクがより低下するのかは明らかになっていない。Wright氏らの研究は、この点に関する新たな知見を得るために行われた。

 この研究には、イングランドとウェールズのプライマリケアと病院レベルでの医療記録、および死亡に関するデータが用いられ、コホート内症例対照研究として実施された。MACCEまたは心不全での受療記録のある患者群と、それらの受療記録のない対照群からなるデータセットを作成。SGLT2iまたはGLP-1RA治療によるMACCE発生および心不全発症リスクとの関連を検討した。

 ベースライン時にMACCEの記録のない2型糖尿病患者33万6,334人のコホートでは、1万8,531人(5.5%)にMACCEが発生。また、心不全のない41万1,206人のコホートでは、1万7,451人(4.2%)が心不全を発症した。

 解析の結果、SGLT2iを含むレジメンでは他剤の併用レジメンと比較して、MACCE発生が18%有意に低かった〔調整後のオッズ比(OR)0.82(95%信頼区間0.73~0.92)〕。GLP-1RAを含むレジメンではOR0.93(同0.81~1.06)であり、他剤の併用レジメンと有意差がなかった。一方、SGLT2iとGLP-1RAを併用するレジメンでは、OR0.70(同0.50~0.98)だった。

 心不全に関しては、SGLT2iを含むレジメンでOR0.49(同0.42~0.58)であり、GLP-1RAを含むレジメンでもOR0.82(同0.71~0.95)と、いずれも他剤の併用レジメンに比較し有意に発症率が低かった。さらに、SGLT2iとGLP-1RAを併用するレジメンでは、OR0.43(同0.28~0.64)であり、心不全発症率がより低いことが明らかになった。

 以上より著者らは、「SGLT2i、およびSGLT2iとGLP-1RAの併用はMACCE抑制に有益であり、かつ、心不全に対してはSGLT2i、GLP-1RA、およびそれらの併用が有益と考えられる」と結論付けている。また、「一次予防におけるこれら処方レジメンの有効性と費用対効果を確認するために、今後の臨床試験が必要とされる」と述べている。

 なお、一部の著者が製薬企業との金銭的関係の存在を明らかにしている。

[HealthDay News 2021年2月17日]

Copyright ©2022 HealthDay. All rights reserved.
Photo Credit: Adobe Stock

糖尿病・内分泌プラクティスWeb 糖尿病・内分泌医療の臨床現場をリードする電子ジャーナル

糖尿病関連デジタルデバイスのエビデンスと使い方 糖尿病の各薬剤を処方する時に最低限注意するポイント(経口薬) 血糖推移をみる際のポイント!~薬剤選択にどう生かすか~
妊婦の糖代謝異常(妊娠糖尿病を含む)の診断と治療 糖尿病を有する女性の計画妊娠と妊娠・分娩・授乳期の注意点 下垂体機能低下症、橋本病、バセドウ病を有する女性の妊娠・不妊治療
インスリン・GLP-1受容体作動薬配合注 GIP/GLP-1受容体作動薬(チルゼパチド) CGMデータを活用したインスリン治療の最適化 1型糖尿病のインスリン治療 2型糖尿病のインスリン治療 最新インスリン注入デバイス(インスリンポンプなど)
肥満症治療薬としてのGLP-1受容体作動薬 肥満症患者の心理とスティグマ 肥満2型糖尿病を含めた代謝性疾患 肥満症治療の今後の展開
2型糖尿病の第1選択薬 肥満のある2型糖尿病の経口薬 高齢2型糖尿病の経口薬 心血管疾患のある2型糖尿病の経口薬

医薬品・医療機器・検査機器

糖尿病診療・療養指導で使用される製品を一覧で掲載。情報収集・整理にお役立てください。

一覧はこちら

最新ニュース記事

よく読まれている記事

関連情報・資料