肥満は必ずしも死亡リスクの上昇を意味しない 米国成人55万人超を調査

2023.08.10
米国人の過体重は必ずしも死亡リスクの上昇を意味しない

 米国の人の過体重(BMI25~30未満)は、必ずしも死亡リスクの上昇を意味せず、その傾向は特に高齢者でより顕著であるとする研究結果が報告された。米ラトガース研究所のAayush Visaria氏、瀬戸口聡子氏の研究によるもので、詳細は「PLOS ONE」に7月5日掲載された。ただ、米国における肥満に該当するBMIが30以上の場合は、死亡リスクが有意に高くなるという。

 BMIで定義される肥満が、心血管代謝性疾患をはじめとする疾患リスクを高めることは広く認識されている。とはいえ、BMIと死亡リスクに関する米国でのエビデンスは、20世紀に行われた調査研究に基づいている。そこでVisaria氏らは、21世紀以降の米国成人でのデータを利用して、BMIと死亡リスクとの関連性を検討した。

 この研究では、1999~2018年の米国国民健康面接調査(NHIS)のデータを、2019年末までの同国の死亡統計(NDI)とリンクさせた解析が行われた。BMIは、自己申告の身長と体重に基づき、最小カテゴリーを18.5未満、最大カテゴリーを40.0以上として、全体を9群に分類した。BMIと死亡リスクとの関連の解析に際しては、多変量Cox比例ハザードモデルにて、共変量(年齢、性別、人種/民族、喫煙・飲酒・運動習慣、教育歴、婚姻状況、保険加入状況、居住地域、自己申告による併存疾患など)の影響を調整した。

 解析対象は成人55万4,332人で、平均年齢46±15歳、女性50%、非ヒスパニック系白人69%。中央値9年(四分位範囲5~14)、最長20年の追跡期間中に、7万5,807人が死亡していた。死亡リスクは、低体重や肥満に該当する場合は高かったが、米国における過体重の範囲〔BMI25~30未満(日本では肥満度I)〕では、有意なリスク上昇は認められなかった。具体的には、BMI22.5~24.9の群を基準として、BMI25.0~27.4では調整ハザード比(aHR)0.95(95%信頼区間0.92~0.98)、BMI27.5~29.9ではaHR0.93(同0.90~0.96)だった。

 感度分析として、追跡開始から2年以内の死亡者を除外した上で、併存疾患のない非喫煙者のみでの解析も行ったが、結果は同様だった。ただし、BMI30以上の場合は21~108%の範囲で死亡リスクの有意な上昇が認められた。年齢で層別化すると、65歳以上の高齢者ではBMI高値による死亡リスクへの影響がより小さく、BMI22.5~34.9の範囲では非有意だった。その一方、65歳未満の場合、リスク上昇が非有意にとどまるのはBMI22.5~27.4と、狭い範囲に限定された。

 著者らは、「われわれの研究結果は、BMIが過体重の範囲にあることは死亡リスクの増大と関連がない可能性を示唆している」と結論付けるとともに、「BMIと死亡リスクのより詳細な関連を明らかにするため、過去の体重の履歴、体組成、および併存疾患の状態も考慮した、さらなる研究が必要」と述べている。

[HealthDay News 2023年7月5日]

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