【新型コロナ】感染に対する偏見が心理的負担をもたらす 働いている人の健康と生産性に障害が

2023.01.23
 新型コロナから回復した患者で、感染に対する偏見と後遺症により、心理的負担と労働機能障害の危険性が高まることを、広島大学などが明らかにした。

 労働機能障害は、疾病や症状など、なんらかの健康上の問題を抱えながら出勤し、生産性が低下している状態(プレゼンティーイズム)を指す。

 調査では、新型コロナの後遺症が労働機能障害に与える影響は、心理的負担を介していることが示唆された。

 「新型コロナからの回復後の心理的負担や労働機能障害を予防し、軽減するためには、感染に対する偏見の払拭や心理的サポートが重要と考えられます」と、研究者は述べている。

感染に対する偏見や後遺症が心理的負担と労働機能障害に影響

 広島大学などは、新型コロナから回復した患者を対象とした研究により、新型コロナ罹患後で、感染に対する偏見と後遺症により、心理的負担と労働機能障害の危険性が高まることを明らかにした。

 これまでの研究で、新型コロナ感染後には、不安や抑うつなどが増加すること、機能障害が生じる危険性が高まることが示されていたが、今回の研究により、感染に対する偏見や後遺症が、感染後の心理的負担と労働機能障害に影響を与えていることが明らかになった。

 新型コロナから回復した後に、「疲労」「息切れ」「頭痛」「味覚障害」などの症状が持続する後遺症が生じる危険性が指摘されている。

 さらに、感染症がたとえ軽症であったとしても、回復後に、仕事、社会生活、家庭生活で「機能障害」を生じる危険性も指摘されている。

 一方、感染に対する偏見も、新型コロナから回復した患者にとって深刻な問題であり、「不安」「抑うつ」などの精神面での問題と関連していることが報告されている。

 そこで研究グループは、2020年4月~2021年11月に、新型コロナ患者を対象に、感染に対する偏見と後遺症、心理的な負担と労働機能障害の関係を評価する調査を行った。

新型コロナの後遺症は心理的負担と労働機能障害を2.4倍に高める

 その結果、参加者の62.5%がひとつ以上の後遺症を経験しており、心理的負担(K6得点5点以上)は36.9%、労働機能障害(Wfun得点14点以上)は37.9%にみられた。

 さらに、感染に対する偏見については、対象者の32.7%が経験したと回答した。

 多変量ロジスティック回帰により、新型コロナの後遺症は、心理的負担(調整オッズ比 2.36、95%信頼区間 1.37~4.05)と労働機能障害(調整オッズ比 2.44、95%信頼区間 1.42~4.21)の両方に関連してことが明らかになった。

 同様に、感染に対する偏見も、心理的負担(調整オッズ比 2.10、95%信頼区間 1.23~3.60)と労働機能障害(調整オッズ比 3.42、95%信頼区間 1.97~5.94)の両方に関連していた。

 研究グループはが、後遺症が心理的負担と労働機能障害に与える影響について評価するため、心理的負担で調整した媒介分析を実施したところ、労働機能障害に対する後遺症の効果はみられなくなり、後遺症が労働機能障害に与える影響は心理的負担を介していることが示唆された。

 軽度の新型コロナから回復した対象者に限定した解析でも、同様の結果が示された。

新型コロナから回復した人のうち、後遺症は62.5%で、心理的負担は36.9%、労働機能障害は37.9%、それぞれみられた。感染に対する偏見も32.7%が経験。

感染に対する偏見は心理的負担と労働機能障害の両方に影響

新型コロナからの回復後対象者にみられた影響の割合

心理的負担と対象者特性の関連

出典:広島大学、2023年

感染後の心理的負担や労働機能障害を予防・軽減する取り組みが重要

 研究は、広島大学大学院医系科学研究科の石井伸弥寄附講座教授、久保達彦教授、田中純子教授、広島市立舟入市民病院の高蓋寿朗病院長、三次中央病院の永澤昌病院長、広島県感染症・疾病管理センターの桑原正雄センター長らによるもの。研究成果は、医学誌「Scientific Reports」に掲載された。

 「これらの結果から、感染に対する偏見と後遺症により、心理的負担と労働機能障害の危険性が高まること、後遺症の労働機能障害に対する影響は、心理的負担を介している可能性があることが明らかになりました」と、研究グループでは述べている。

 「新型コロナ患者が増えるなか、感染症からの回復後に心理的負担を経験したり、機能障害に悩まされたりする人も増えていることが考えられます。新型コロナ流行による社会への影響を抑えるためには、そうした感染後の心理的負担や労働機能障害を予防もしくは軽減する取り組みが重要であると考えられます」。

 「そのために、感染に対する偏見の払拭や心理的サポートが重要であることが示唆されました。今後は、感染後の支援として、どのようなサポートが適切であるか研究を進めるとともに、そうしたサポートを感染症対策と連携させていく取り組みが必要であると考えられます」としている。

 調査は、2020年4月~2021年11月に、広島県の新型コロナ対応病院2施設で研究に参加することに同意した新型コロナ患者309人を対象に行ったもの。

対象者に、▼新型コロナ後遺症、▼心理的負担、▼労働機能障害、▼感染に対する偏見に関する項目(「誹謗中傷を受けた」「風評被害により仕事上での不利益があった」など)などを含めた調査票に回答してもらった。

 心理的負担は、うつ病や不安障害などの精神疾患をスクリーニングすることを目的として開発された心理尺度である「K6」により、労働機能障害は、「Wfun」により評価した。

広島大学大学院医系科学研究科共生社会医学講座
The role of discrimination in the relation between COVID-19 sequelae, psychological distress, and work impairment in COVID-19 survivors (Scientific Reports 2022年12月23日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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