時間制限食により糖代謝異常のある肥満者のHbA1cが低下

2024.10.09
時間制限食でメタボ該当者のHbA1cが有意に低下

 メタボリックシンドローム(MetS)該当者の食事療法に時間制限食を用いることで、標準的な食事療法よりもHbA1cが有意に低下したとする研究結果が報告された。米ソーク生物学研究所のEmily N.C. Manoogian氏らの研究によるもので、詳細は「Annals of Internal Medicine」に10月1日掲載された。

 時間制限食(time-restricted eating;TRE)は、1日の中でエネルギー量のある飲食物を摂取可能な時間帯を限定し、少なくとも14時間以上はエネルギーを摂取しないという食事療法。

 一方、摂取を禁止する時間帯以外はエネルギー量を考えず自由な飲食が可能で、総摂取量の増大が許容されることもある。

 この手軽さから人気が高まりつつあり、また減量や心代謝関連マーカーの改善につながるとする研究報告が増えているものの、まだ評価は確立されていない。

 Manoogian氏らは、心代謝関連マーカーに対するTREの有用性を、標準的な食事療法と比較するランダム化比較試験を実施した。研究参加者は、空腹時血糖値高値またはHbA1c高値を含む代謝異常を呈している成人のMetS該当者。無作為にTRE群と標準的食事療法群(対照群)に割り付け、3カ月間の介入を行った。

 なお、食事療法の有用性を検討する場合、薬物療法施行中の患者は対象から除外することが多いが、本研究では対象に含めた。著者らは、これによって「薬物療法にTREを上乗せすることのメリットも検討し得た初の研究となった」としている。

 介入に際して、TRE群では個人の起床/就床パターンを把握した上で、摂食可能時間が4時間以上短縮されるように個別に設定。その結果、起床1時間後から就床3時間前までの間の8~10時間が摂食可能時間として設定された。

 介入期間中の遵守状況は、スマートフォンのアプリを用いてリアルタイムで追跡された。研究参加者全員が標準的な治療を継続し、食事に関しては地中海式ダイエットに関する栄養カウンセリングが行われた。

 研究参加者の89%に当たる108人が介入を終了した。ベースライン時点の主な特徴は、平均年齢59歳、女性56人、BMI31.22、摂食時間14.19時間だった。

 年齢の影響を調整後、介入後のTRE群のHbA1cは対照群に対して-0.10%[95%信頼区間 -0.19~-0.003]であり、有意差が認められた。また、体重、BMI、腹部体幹脂肪(abdominal trunk fat)の低下幅も、対照群より3~4%多かった。減量時の一般的な懸念材料のひとつである、除脂肪体重の有意な低下は認められなかった。全体として、重大な有害事象は報告されなかった。

 著者らは、「個別化されたTREは成人MetS該当者の高血糖改善につながり、心代謝系の健康に広範なメリットをもたらす可能性のある、実践的なライフスタイル介入と言える」と述べている。

[HealthDay News 2024年9月30日]

Copyright ©2024 HealthDay. All rights reserved.
Photo Credit: Adobe Stock

糖尿病・内分泌プラクティスWeb 糖尿病・内分泌医療の臨床現場をリードする電子ジャーナル

SGLT2阻害薬を高齢者でどう使うか 週1回注射のインスリン製剤がもたらす変革 高齢1型糖尿病の治療 糖尿病治療と認知症予防
糖尿病スティグマとアドボカシー活動 糖尿病性腎症患者に対する療養支援 持続可能な糖尿病運動療法 苦労しています、服薬指導-短時間で患者の心を掴み、リスク回避! 進化する1型糖尿病診療 多職種連携による肥満治療
糖尿病と歯周病の最新エビデンス 甲状腺結節の日常臨床での取り扱い 肥満の外科治療-減量・代謝改善手術の最新エビデンス- 骨粗鬆症 脂質異常症 コレステロール低下薬 がんと糖尿病
インスリンの種類と使い方 糖尿病関連デジタルデバイスのエビデンスと使い方 糖尿病薬を処方する時に最低限注意するポイント[経口薬] インスリンポンプ・持続血糖測定器 血糖推移をみる際のポイント
糖代謝の調節機構 脂質の代謝 リン酸化によるシグナル伝達 タンパク質とアミノ酸の代謝

医薬品・医療機器・検査機器

糖尿病診療・療養指導で使用される製品を一覧で掲載。情報収集・整理にお役立てください。

一覧はこちら

最新ニュース記事

よく読まれている記事

関連情報・資料