DPP-4阻害薬「ジャヌビア」「グラクティブ」から発がん性が疑われるNTTPを検出 糖尿病患者の自己判断で服用を中止しないよう呼びかけ

2022.09.07
 シタグリプチンを有効成分とするDPP-4阻害薬で、ニトロソアミン類に分類される化学物質「NTTP」の含有が確認された。

 NTTPが発がん性を有するかは不明だが、厚生労働省によると一般的に、ニトロソアミン類は発がん性を有する可能性がある。

 日本で販売されているシタグリプチンを有効成分とする薬剤は9月1日現在で、「ジャヌビア錠 (12.5mg、25mg、50mg、100mg)」、「グラクティブ錠 (12.5mg、25mg、50mg、100mg)」、「スージャヌ配合錠」がある。

 MSDと小野薬品工業は、「NTTPに関連する科学的および医学的なリスク評価にもとづき、現在確認されているNTTPレベルでは、これらの薬剤を長年服用している患者さんを含め、患者さんの安全性に対するリスクはほとんどないと判断しています」と公表した。

 厚生労働省は、「一般的に、血糖降下薬については、服用の中止によりさまざまな併発症のリスクを生じる可能性があります。そのため、患者自身の自己の判断のみにより服用を中止しないよう説明いただきたい」としている。

ニトロソアミン類は発がん性がある可能性

 シタグリプチンリン酸塩水和物を有効成分とするDPP-4阻害薬で、ニトロソアミン類に分類される化学物質「NTTP(7-Nitroso-3-(trifluoromethyl)-5,6,7,8-tetrahydro[1,2,4]triazolo-[4,3-a]pyrazine)」の含有が確認されたと、MSDと小野薬品工業が公表した。

 日本で販売されているシタグリプチンを有効成分とする薬剤は9月1日現在で、「ジャヌビア錠 (12.5mg、25mg、50mg、100mg)」、「グラクティブ錠 (12.5mg、25mg、50mg、100mg)」、「スージャヌ配合錠」がある。

 NTTPは、シタグリプチンの原料または製造工程中の分解産物がニトロソ化することにより生成すると考えられている。シタグリプチンを含有する薬剤の特定のロットでNTTPが確認された根本原因について、両社は現在、調査を行っているとしている。

 また、ニトロソアミン類のうちのいくつかは、実験室での試験にもとづき、ヒト発がん性物質の可能性があるとされているが、NTTPについては発がん性を直接評価したデータはない。両社は現在、追加の非臨床試験の実施について検討している。

 なお、米国食品医薬品局(FDA)も8月9日、この件について安全性情報を発表しており、次のことを明言している。

 シタグリプチンは、2型糖尿病患者の高血糖をコントロールするために使用される処方薬です。この状態の患者が、医療専門家に相談せずにシタグリプチンの服用を中止することは危険です。FDAは、患者の治療でのギャップを防ぐために、臨床的に適切な場合には、処方者がシタグリプチンを使用し続けることを推奨しています。

 また、日本の厚生労働省は、想定される健康被害のリスクについて、次のことを公表している。

 一般的に、血糖降下薬については、服用の中止によりさまざまな併発症のリスクを生じる可能性があります。そのため、医療機関などに対しては、患者自身の自己の判断のみにより服用を中止しないよう説明いただきたいこと、また、患者からシタグリプチンリン酸塩水和物製剤の服用の継続について照会などがあり、他の薬剤への切り替えなどの対応を希望される場合には、他の治療選択肢について医師または薬剤師に相談していただくことについて周知をお願いいたします。
(略)
 現在、製造販売業者が追加の非臨床試験の実施について検討するとともに安全性の評価を行っているところであり、結果がまとまり次第お知らせする予定です。

患者の安全性に対するリスクはほとんどないと判断

 既知のニトロソアミン類については、ニトロソアミンごとに1日許容摂取量が設定されているが、NTTPに関してはグローバルの基準はない。

 米国食品医薬品局(FDA)と欧州医薬品庁(EMA)は最近、1日許容摂取量(37ng/日)を設定したが、患者に対する適切な治療が確保されるよう、FDAは暫定許容摂取量を最大246.7ng/日とするガイダンスを提供した。

 FDAは、暫定許容摂取量として最大246.7ng/日のNTTPに曝露した場合のリスクについて評価し、37ng/日のNTTPに生涯曝露された場合と比べ、発がんリスクの増加は最小限と結論づけている。

 また両社は「NTTPに関連する科学的および医学的なリスク評価にもとづき、現在確認されているNTTPレベルでは、これらの薬剤を長年服用している患者さんを含め、患者さんの安全性に対するリスクはほとんどないと判断している」としている。

 両社では、追加の品質管理を実施し、NTTPを暫定の許容摂取量(最大246.7ng/日)以下にして、製品の出荷は継続すると公表した。また、現時点では、すでに市場に流通しているロットについては、処方の停止やその他の措置は必要ないと判断しているという。

 両社は、製品の安全性、品質、有効性、および両社製品を使用する人々の健康を最優先にしており、今後はさらにNTTPレベルを1日許容摂取量(37ng/日)以下に抑えるために、製造プロセスの管理を強化していく予定だ。すでに、国内当局に報告し、今後の方針について相談をしており、その結果をふまえて適切な対応を進めるとしている。

MSD カスタマーサポートセンター
Tel.0120-024-091 (受付時間:土日祝日、同社休日を除く9:00~17:00)

小野薬品工業 くすり相談室(医療関係者向け)
Tel.0120-626-190 (受付時間:土日祝日、同社休日を除く9:00~17:00)

FDA works to avoid shortage of sitagliptin following detection of nitrosamine impurity (米国食品医薬品局 2022年8月9日)

関係団体からの医療安全情報などについてのお知らせ (医薬品医療機器総合機構)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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