DPP-4阻害薬「ジャヌビア」「グラクティブ」から発がん性が疑われるNTTPを検出 糖尿病患者の自己判断で服用を中止しないよう呼びかけ
ニトロソアミン類は発がん性がある可能性
シタグリプチンリン酸塩水和物を有効成分とするDPP-4阻害薬で、ニトロソアミン類に分類される化学物質「NTTP(7-Nitroso-3-(trifluoromethyl)-5,6,7,8-tetrahydro[1,2,4]triazolo-[4,3-a]pyrazine)」の含有が確認されたと、MSDと小野薬品工業が公表した。
日本で販売されているシタグリプチンを有効成分とする薬剤は9月1日現在で、「ジャヌビア錠 (12.5mg、25mg、50mg、100mg)」、「グラクティブ錠 (12.5mg、25mg、50mg、100mg)」、「スージャヌ配合錠」がある。
NTTPは、シタグリプチンの原料または製造工程中の分解産物がニトロソ化することにより生成すると考えられている。シタグリプチンを含有する薬剤の特定のロットでNTTPが確認された根本原因について、両社は現在、調査を行っているとしている。
また、ニトロソアミン類のうちのいくつかは、実験室での試験にもとづき、ヒト発がん性物質の可能性があるとされているが、NTTPについては発がん性を直接評価したデータはない。両社は現在、追加の非臨床試験の実施について検討している。
なお、米国食品医薬品局(FDA)も8月9日、この件について安全性情報を発表しており、次のことを明言している。
また、日本の厚生労働省は、想定される健康被害のリスクについて、次のことを公表している。
(略)
現在、製造販売業者が追加の非臨床試験の実施について検討するとともに安全性の評価を行っているところであり、結果がまとまり次第お知らせする予定です。
患者の安全性に対するリスクはほとんどないと判断
既知のニトロソアミン類については、ニトロソアミンごとに1日許容摂取量が設定されているが、NTTPに関してはグローバルの基準はない。
米国食品医薬品局(FDA)と欧州医薬品庁(EMA)は最近、1日許容摂取量(37ng/日)を設定したが、患者に対する適切な治療が確保されるよう、FDAは暫定許容摂取量を最大246.7ng/日とするガイダンスを提供した。
FDAは、暫定許容摂取量として最大246.7ng/日のNTTPに曝露した場合のリスクについて評価し、37ng/日のNTTPに生涯曝露された場合と比べ、発がんリスクの増加は最小限と結論づけている。
また両社は「NTTPに関連する科学的および医学的なリスク評価にもとづき、現在確認されているNTTPレベルでは、これらの薬剤を長年服用している患者さんを含め、患者さんの安全性に対するリスクはほとんどないと判断している」としている。
両社では、追加の品質管理を実施し、NTTPを暫定の許容摂取量(最大246.7ng/日)以下にして、製品の出荷は継続すると公表した。また、現時点では、すでに市場に流通しているロットについては、処方の停止やその他の措置は必要ないと判断しているという。
両社は、製品の安全性、品質、有効性、および両社製品を使用する人々の健康を最優先にしており、今後はさらにNTTPレベルを1日許容摂取量(37ng/日)以下に抑えるために、製造プロセスの管理を強化していく予定だ。すでに、国内当局に報告し、今後の方針について相談をしており、その結果をふまえて適切な対応を進めるとしている。
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