NAFLDで心不全リスクが1.5倍に 1000万人超の縦断的コホート研究をメタ解析

2022.08.01
NAFLDは心不全リスクを1.5倍に押し上げる可能性

 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)が、心不全の独立したリスク因子であることを示すデータが報告された。ヴェローナ大学(イタリア)のAlessandro Mantovani氏らが行った、研究対象者数の合計が1,000万人を超える縦断的コホート研究11件のメタ解析の結果であり、詳細が「Gut」に7月25日掲載された。NAFLD患者では心不全新規発症リスクが1.5倍高いという。

 近年、NAFLDが心不全の新規発症と関連している可能性を示唆する研究結果が報告されている。ただし、NAFLDによる心不全リスク上昇の程度や、そのリスクがNAFLDの重症度の影響を受けるのか否かは明らかになっていない。Mantovani氏らはこの点をメタ解析により検討した。

 Scopus、Web of Science、およびPubMedを用い、2022年3月までに収載された論文を対象として、NAFLDと心不全新規発症リスクとの関連を解析可能な研究を検索。ヒットした490報の中から、ハザード比(HR)を95%信頼区間とともに明示していること、NAFLDの定義が明確であることなどの適格条件を満たす研究報告を抽出した。学会発表や症例報告、総説、対照群のないデザインでの研究、2型糖尿病患者や心不全既往者のみを対象に行われた研究は除外した。

 その結果、米国と欧州から各4件、および韓国から3件、計11件の縦断的コホート研究が特定された。研究参加者数は計1,124万2,231人(平均年齢55歳、女性50.1%、BMI26.4)であり、ベースライン時点で294万4,058人(26.2%)がNAFLDを有していた。ファンネルプロットによる評価で、有意な出版バイアスは認められなかった。

 中央値10.0年の追跡で、9万7,716人が心不全を新規発症していた。メタ解析の結果、ベースライン時点でNAFLDを有していた群は、心不全発症リスクが1.5倍高いことが明らかになった〔HR1.50(95%信頼区間1.34~1.67)、P<0.0001〕。このようなNAFLDに伴う心不全リスクの上昇は、年齢、性別、民族性、BMI、糖尿病、高血圧、およびその他の心血管リスク因子にかかわりなく認められた。NAFLDの重症度と心不全リスクとの関連については、データが十分でなくメタ解析は行われなかったが、2件の研究では、NAFLDの重症度が高いほど心不全リスクが高い傾向が示されていた。

 以上より論文の結論は、「大規模なメタ解析の結果、NAFLDの存在は中央値10年の追跡で、心不全新規発症のリスクが1.5倍高いことと関連していた。重要なことは、NAFLDによる心不全発症リスクの上昇は、年齢や性別、民族性、およびBMIや糖尿病などの心血管リスク因子から独立しているという点だ。ただし、観察研究からは因果関係を証明することはできない」とまとめられている。また、Mantovani氏は、「われわれの研究結果は、NAFLD患者に対して、肝疾患と心血管リスクの双方を管理するための学際的なアプローチが必要であることを強調している」と述べている。

[HealthDay News 2022年7月26日]

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