AIの深層学習を用いた眼底カメラ用プログラムを開発 糖尿病による失明前兆「血液循環異常」を検知するプログラムも
日本初の健常眼との差異を色表示するAIを用いた眼底撮影用プログラム
自治医科大学発ベンチャーのDeepEyeVisionとニコンは、健常眼との差異を色表示するものとしては日本初となる、AIの深層学習を用いた眼底カメラ用プログラム「DeepEyeVision for RetinaStation」を共同で開発した。
同プログラムを利用することで、ニコンソリューションズが販売する眼底撮影装置「RetinaStation」で撮影した眼底画像に対して、AIが解析した健常眼との差異を色表示できるようになる。
「RetinaStation」は、ワンタッチで両眼のアライメント、フォーカス、撮影までをすべて自動で、直感的に操作できる眼底撮影装置。10.1型の大型タッチパネルに1,200万画素の高解像度な画像を表示し、眼底の細部まで再現する。PC一体型のコンパクトな筐体で、省スペース化も実現した。
DeepEyeVisionは、自治医科大学医学部眼科学講座の高橋秀徳准教授が、同大学の医療AI技術を社会に還元することを目的に設立した自治医科大学発ベンチャー。AIによる画像診断技術をいかし、眼科領域にとどまらず、研究開発を行っている。
「DeepEyeVision for RetinaStation」の開発では、DeepEyeVisionがもつ深層学習の技術を活用。同社が独自に開発した「逸脱可視化AIにより、が健常眼との差異を色表示する。
これは、「RetinaStation」で撮影された眼底画像に対して、健常眼との乖離度が高いところ、つまり医師が重点的に審査すべき関心領域をヒートマップで示すもので、この機能により、眼科医による迅速な診断を支援し、医療の質の向上に貢献することが期待されるとしている。
製品の開発にあたり、日本眼科AI学会の関連団体であるJapan Ocular Imaging Registryの支援を受けた。医療機器認証はDeepEyeVisionが取得。4月に大阪で開催された第126回日本眼科学会総会でもブース展示を実施した。
AIを用いて眼底写真から「血液循環異常」を検知する読影支援プログラムも開発
DeepEyeVisionは、糖尿病による失明前兆である網膜血液循環異常の検知プログラムの開発も進めており、このほど新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した、2022年度「研究開発型スタートアップ支援事業/シード期の研究開発型スタートアップに対する事業化支援」第1回公募(NEDO STS)に採択された。
増殖糖尿病網膜症の前兆である血液循環異常の診断では、蛍光造影剤を使った検査が行われるが、まれに副作用が生じることもあり、医療現場にとっては負担になっている。
造影剤の安全性は確立されているものの、まれに体質に合わずにアレルギーを起こすことがあり、軽いときには発疹や嘔吐などの症状が、重いときには呼吸困難・意識障害などの症状が起こる。医療現場ではこれらの副作用に備えて、適切な処置が行えるような体制を整えておく必要がある。
そこで同社は、簡易的な検査手法として、AIを用いて眼底写真から「血液循環異常」を検知する読影支援プログラムに開発に着手した。
開発するプログラムは、蛍光造影剤による検査を代替するものではないが、将来的には医療現場に普及させ、負荷軽減とともに、糖尿病網膜症によって失明する患者を減らし、失明によって生じる社会的損失を低減させることを目指すとしている。
DeepEyeVision AIで目から始まる健康を支援する
RetinaStation (ニコン ヘルスケア事業部、医療従事者向けページ)
研究開発型スタートアップ支援事業 (新エネルギー・産業技術総合開発機構)