isCGMが1型糖尿病患者のHbA1cをSMBGに比べ改善 血糖管理不良症例のHbA1cが低下

2022.10.27
アラート機能付きisCGMが1型糖尿病患者のHbA1cを対SMBGで有意に改善

 1型糖尿病患者が、低血糖や高血糖に対するアラート機能付きの間歇スキャン式持続血糖測定器(isCGM)を用いた場合、指先採血による血糖自己測定(SMBG)よりも血糖コントロールが改善することが報告された。HbA1cやTIR(血糖値が目標範囲内にあった時間)などの指標に有意差が認められたという。英マンチェスター大学のLalantha Leelarathna氏らの研究によるもので、詳細は「The New England Journal of Medicine」に10月20日掲載された。

 isCGMは利便性の高さから、糖尿病治療に広く使われるようになりつつある。ただし、オプションとして低血糖や高血糖のアラート機能が付随しているisCGMの有用性を、血糖管理不十分な1型糖尿病患者で確認した研究は少ない。Leelarathna氏らはこの点を多施設共同無作為化比較試験で検討した。

 研究参加者は、年齢16歳以上で1型糖尿病罹病期間が1年以上であり、HbA1cが7.5~11.0%の範囲であって、インスリン頻回注射療法(MDI)または持続皮下インスリン注入療法(CSII)を行っている患者156人。常時血糖値を確認可能な連続血糖測定(リアルタイムCGM)を利用している患者や、過去12週間以内に4週間以上isCGMを利用したことのある患者、妊婦および妊娠を計画中の患者、重症低血糖の既往のある患者は除外されている。

 無作為に各群78人ずつのisCGM群とSMBG群に二分。主要評価項目をHbA1cとして24週間介入した。結果は、患者割り付け通りに解析するintention-to-treatにより群間差を判定した。参加者の平均年齢は44±15歳、女性44%、糖尿病罹病期間21±13年、HbA1c8.6±0.8%であり、有意な群間差はなかった。

 介入前後のHbA1cは、isCGM群が8.7±0.9%、7.9±0.8%、SMBG群は8.5±0.8%、8.3±0.9%であり、低下幅に有意な群間差が認められた〔調整平均差-0.5ポイント(95%信頼区間-0.7~-0.3)、P<0.001〕。また、血糖値が70~180mg/dLの範囲内にあった時間(TIR)はisCGM群の方が9.0ポイント(同4.7~13.3)長く、130分(68~192)の差があった。低血糖(70mg/dL未満)の時間帯はisCGM群の方が3.0ポイント(1.4〜4.5)短く、43分(20〜65)の差があった。

 isCGM群のセンサースキャン回数は1日当たり11.0±6.2回だった。また、指先などからの採血による血糖確認は、ベースライン時点ではisCGM群4.2±2.1回、SMBG群4.5±2.3回であったものが、24週時点では同順に0.6±1.1回、4.0±2.3回となっていた〔調整平均差-3.3回(-3.9~-2.8)〕。なお、1日当たりのインスリン投与量の群間差は有意でなかった〔-0.5単位(-5.6~4.0)〕。

 有害事象に関しては、重症低血糖がSMBG群の2人(イベント数3)、入院を要するケトアシドーシスがisCGM群の1人(同1)、入院を要さない有症状のケトーシスがSMBG群の2人(同3)に発生していた。またisCGM群の1人が、センサーに対する皮膚反応を報告した。

 以上の結果を著者らは、「血糖コントロールが不十分な1型糖尿病患者に対して、高血糖と低血糖のアラートというオプション機能付きisCGMを用いた介入を行った結果、指先などから採血するSMBGに比べてHbA1cが有意に低下した」とまとめている。

 なお、数人の著者が、製薬・医療機器企業との金銭的関係の存在を明らかにしている。

[HealthDay News 2022年10月17日]

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