【新型コロナ】ワクチンの組み合わせによる効果の違いをはじめて解明 「1・2回目ファイザー+3回目モデルナ」の効果は?
異なるワクチンのブースター接種を直接比較
東京大学は、「ワクチン接種記録システム(VRS)」、および「新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS)」のデータを用いて、一次接種とブースター接種のワクチンの組み合わせの違いによる、新型コロナウイルス感染予防効果の違いについて調査した。
新型コロナのワクチンの3回目ブースター接種は、新型コロナ感染予防に有効であることが知られているが、一次接種とブースター接種のワクチンの組み合わせにより、効果が異なる可能性が示唆されている。
これまでの研究では、ワクチンの組み合わせ別に抗体価の比較は行われたものの、実際の感染予防の効果は確認されていなかった。また、英国で行われた大規模研究では、一次接種とブースター接種のさまざまな組み合わせにより、ブースター未接種と有効性を比較しているが、異なる組み合わせのブースター接種間でその有効性を直接比較した研究はこれまでなかった。
そこで研究グループは、ファイザーのワクチンによる一次接種完了者を対象に、異なるワクチンのブースター接種を直接比較し、それぞれの新型コロナウイルス感染予防効果を分析した。
「1・2回目ファイザー+3回目モデルナ」で感染リスクはより低下
VRSで、2021年11月22日までにファイザーのワクチンを用い、一次接種を完了した16歳以上の人(15万4,925人)を同定し、2022年4月15日まで追跡した。
期間終了時でのファイザーのワクチンによるブースター接種、モデルナのワクチンによるブースター接種、ブースター接種なしの対象者の人数はそれぞれ、6万2,586人(40.4%)、5万1,490人(33.2%)、4万849人(26.4%)だった。各グループの年齢中央値は、それぞれ69歳、71歳、47歳。
その結果、ファイザーのワクチンによる一次接種完了者では、3回目のブースター接種でモデルナのワクチンを使用した場合、ファイザーのワクチンを使用した場合に比べ、新型コロナの感染リスクはより低くなることが分かった。
ファイザーのワクチンのブースター接種を基準とした統合ハザード比は、モデルナのワクチンのブースター接種が0.62、ブースター接種なしが1.72となった。モデルナのブースター接種の感染予防の効果は、年齢カテゴリ間で同様の傾向が示された。
「研究結果は、いまだ不明な点が多いワクチンの組み合わせとその有効性について新たな知見を与え、個人の意思決定やワクチン確保・流通の政策立案に寄与すると考えられます」と、研究グループでは述べている。
研究は、東京大学大学院医学系研究科の大野幸子特任講師、道端伸明特任助教、康永秀生教授、同大学大学院情報学環の上村鋼平准教授らの研究グループによるもの。研究成果は「Clinical Infectious Diseases」にオンライン掲載された。
モデルナのワクチンによるブースター接種群ではコロナ感染率は0.7%
研究グループは今回の研究で、山口県下関市のVRS、HER-SYSに記録されたデータを用いて解析した。同定した15万4,925人のうち、コロナ感染者の割合(%)は、ファイザーのワクチンによるブースター接種群が1.4%、モデルナのワクチンによるブースター接種群が0.7%、ブースター接種なし群が4.9%だった。
年齢を、16~44歳、45~64歳、65~84歳、≧85歳のカテゴリに分類し、年齢、性別、2回目接種からの日数を調整した年齢層別コックス回帰、およびランダム効果メタ解析による推定ハザード比の統合を行った。その際、ブースターワクチン接種は時間依存性変数として扱った。
今回の研究で、ファイザーのワクチンによる一次接種完了者で、モデルナのブースターワクチン接種をしたグループの方が、ファイザーのブースターワクチン接種を行ったグループに比べ新型コロナウイルス感染のリスクが低いことが示された。
東京大学大学院医学系研究科 イートロス医学講座
Comparative effectiveness of BNT162b2 and mRNA-1273 booster dose after BNT162b2 primary vaccination against the Omicron variants: A retrospective cohort study using large-scale population-based registries in Japan (Clinical Infectious Diseases 2022年9月18日)