SGLT2阻害薬は強いインスリン抵抗性を示す難治希少性の糖尿病にも有用 医師主導治験で証明

2021.09.15
 神戸大学は、希少疾患である治療抵抗性の糖尿病(インスリン抵抗症および脂肪萎縮性糖尿病)の患者を対象に、世界ではじめてSGLT2阻害薬「エンパグリフロジン」の有効性および安全性を評価する医師主導治験を実施し、良好な成績を得たと発表した。
 今回の治験結果にもとづき、両疾患の保険診療でエンパグリフロジンを使用できるようにするため、同剤の適応症に追加する申請が計画されている。

強いインスリン抵抗性を示す糖尿病に対するSGLT2阻害薬の効果を期待

 研究は、神戸大学大学院医学研究科糖尿病・内分泌内科学部門の小川渉教授らの研究グループによるもの。

 インスリン抵抗症は、インスリン受容体の働きが障害されるため、また脂肪萎縮性糖尿病は、脂肪組織が欠如あるいは大幅に減少するためにインスリン抵抗性が起こる疾患。国内の推定患者数はそれぞれ100名程度だ。

 これらの疾患では、従来の経口血糖降下薬の効果が不十分な例が多く、しばしば多量のインスリンの皮下注射が必要になる。多量のインスリンの皮下注射は、痛みなど患者への負担も大きく、重大な副作用である低血糖が起きるリスクも高まる。

 保険診療上、このような特殊な糖尿病に対して適応のある経口血糖降下薬はなく、インスリンに加えて、IGF-1製剤やレプチン製剤という特別な注射薬が使用される。

 SGLT2阻害薬を含む経口血糖降下薬は、医師の判断のもと、有効性や安全性に対する検証が不十分なまま、保険適応外で処方されているのが実情だ。

 SGLT2阻害薬は、尿へのグルコース排泄を促進するという、インスリンとは独立したメカニズムで血糖を低下させることから、このような強いインスリン抵抗性を示す糖尿病に対する効果が期待されていた。

インスリンとSGLT2阻害剤の作用
インスリン抵抗性状態ではインスリンの作用が障害され、血液中のブドウ糖の濃度が高まる。SGLT2阻害剤は血液中のブドウ糖を尿の中に捨て去る働きをもち、インスリン抵抗性状態でも血糖値を下げることができる。
出典:神戸大学、2021年

保険診療で使用できるよう適応追加の申請を計画

 そこで小川教授らは、インスリン抵抗症患者および脂肪萎縮性糖尿病患者を対象に、SGLT2阻害薬であるエンパグリフロジンの有効性および安全性を評価する医師主導治験を実施した。

 これらの疾患を継続的に治療している全国の大学病院(神戸大学、東北大学、岡山大学、日本医科大学、自治医科大学)で、対象患者8例に対してエンパグリフロジン10mgを1日1回、効果の不十分な例には25mgに増量して経口投与し、24週間後のHbA1c値の治療前からの変化量を評価した。

 その結果、HbA1c値は治療前と比較して平均で約1%低下した(8.46±1.45%→7.48±1.26%)。また、インスリンを使用していた患者では平均使用量が約30単位(116.5±38.9単位→89.0±52.3単位)減少した。

 これまでにもインスリン抵抗症および脂肪萎縮性糖尿病に対するSGLT2阻害薬の使用例は報告されていたが、治験の厳格な基準にもとづき有効性および安全性を評価したのは今回の医師主導治験がはじめてとなる。

 今回の治験結果にもとづき、インスリン抵抗症や脂肪萎縮性糖尿病の患者が正式な保険診療に同剤を使用できるようにするため、エンパグリフロジンの適応症にインスリン抵抗症および脂肪萎縮性糖尿病の適応追加の申請が計画されている。

 「まれな疾患に罹患している患者さんは、疾患の認知度が低いことによりさまざまな面で不利益を強いられています。とくに遺伝子の変異がその主な原因であるインスリン抵抗症および脂肪萎縮性糖尿病の患者さんは、しばしば、通常の糖尿病と一括りにされることに、強い違和感と心理的な負担をもっておられます」と、小川教授は述べている。

 「今回の結果は、インスリン抵抗症や脂肪萎縮性糖尿病の患者さんに、より良い治療を提供できる可能性を示した点において朗報となるだけでなく、両疾患がSGLT2阻害薬エンパグリフロジンの正式な適応症となれば、この薬剤を販売している製薬会社の情報提供活動などを通じて認知度が向上し、これらの疾患に対する無理解の改善につながることも期待されます」としている。

神戸大学大学院医学研究科糖尿病・内分泌内科学部門
インスリン抵抗性を伴う難治性糖尿病に対するエンパグリフロジン療法の有効性ならびに安全性に関する多施設共同非盲検単群試験(jRCT)

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